カラダとココロの健康アドバイス カラダとココロの健康アドバイス

大人も楽しめるなごみ絵本

カラフルなイラスト、ほのぼのとしたキャラクター……と、大人向けの本とは違った魅力が詰まっている絵本。固定概念にとらわれないストーリーや自由なアイデアが心を癒やしてくれたり、励ましてくれたりする3冊の絵本を紹介します。

Book1

『よかったねネッドくん』

ニューヨークに住むネッドくんに、ある日届いたサプライズパーティーへの招待状。でも会場は、遠く離れたフロリダで……。
カラーページの「よかったね!(=fortunately)」と、モノクロページの「でも、たいへん!(=unfortunately)」な出来事が交互に描かれる、ハラハラドキドキの冒険物語。

作者のレミー・シャーリップさんは、俳優、ダンサー、デザイナー、映画制作など幅広い分野で活躍したアー
ティストで、本作も米国で爆発的な人気となったのだそうです。

フロリダ行きの飛行機が爆発したかと思えば、パラシュートが開いて助かったり、安心したのもつかの間、次はパラシュートに穴があいていたり……。絵本ならではの奇想天外でスリリングなストーリーですが、大人が読むと「良いことと悪いことの繰り返しこそが、人生なのかも」と、ハッとさせられる部分も。

日々の暮らしの中で遭遇する理不尽なことも、もしかしたら次の「よかったね!(=fortunately)」につながっているかもしれない。そんなふうに前向きに人生を捉えるための、お守りになりそうな1冊です。

『よかったねネッドくん』
作/レミー・シャーリップ
訳/やぎたよしこ
偕成社、1969年、
本体価格1,400円(税別)

Book1

『穴の本』

『穴の本』というタイトルどおりに、本の真ん中に小さな穴があいているユニークなつくりのしかけ絵本です。米国で最初に発行されたのは1908年で、今から100年以上も前。どこかノスタルジックな色合いの絵と凝った装丁は、さりげなく置くだけで、すてきなインテリアにもなってくれそうです。

物語の始まりはトム・ポッツという少年が誤って銃を
撃ってしまうという、いささか物騒なシーンから。銃から飛び出した弾丸は、水道管、自動車、紳士がかぶっている帽子……と、ありとあらゆるものに穴をあけて進み続けます。

ページをめくるたびに、まるで世界一周をするように弾が遠くへ飛んでいく様子は痛快。本作と同じように、「日常の少し隣には、まったく違う世界が広がっているのかも」と想像することは、決まりきった毎日にちょっとした風穴をあけてくれそうです。

英文学者でもある高山宏さんによる、ときにブラック
ジョークを交えたテンポの良い訳文も注目したいところ。目で読むだけでなく、ぜひ声に出して、七五調のリズムを楽しんでみてください。

『穴の本』
作/ピーター・ニューエル
訳/高山宏
亜紀書房、2016年(日本版)、
本体価格1,600円(税別)

Book1

『ふくろうくん』

教科書でもおなじみの人気シリーズ『がまくんとかえるくん』をはじめ、さまざまな動物たちを描いてきた米国の絵本作家、アーノルド・ローベルさんが、ひとり暮らしの「ふくろうくん」を主人公にして作った物語。

冬のある日、家の中に吹き込んできた冷たい風と雪の「ふゆくん」と格闘したり、涙でお茶をいれようとして悲しかったことを思い出したり、家の1階と2階に同時にいられる方法を大まじめに考えたり……と、ほほえましいふくろうくんの日常が優しい視点で描かれています。

注目したいのが、捉えようによっては孤独な環境にも思えるふくろうくんが、決して寂しそうではないこと。“ひとり遊び力”の高いふくろうくんの姿が、現代の大人に
とっては、自分の時間を楽しむヒントになるかもしれません。

茶色を基調に、色数を絞って描かれたイラストもローベルならではの魅力。シックな色調と穏やかな絵柄、そしてほのぼのとしたストーリーは、夜の読書にぴったり。読むたびにじんわりと心に染みていきそうな作品です。

『ふくろうくん』
作/アーノルド・ローベル
訳/三木 卓
文化出版局、1976年、
本体価格854円(税別)

監修

柳下 恭平 株式会社鷗来堂 代表取締役
1976年生まれ。いろいろあって、29歳で書籍校閲専門の「鷗来堂」を創立する。
校正講座、書店「かもめブックス」、日本中に書店を増やすための事業「EJS」などの事業も展開している。