Chapter5

どんな治療をするの?

治療は薬物療法と手術の2つ

治療方法は薬物療法と手術の2種類ですが、手術の術式は筋腫の大きさや位置によって選択肢が変わってきます。

薬物療法

対症療法 月経痛や腰痛、貧血など、つらい症状を素早く緩和するのが目的です。月経痛などの痛みにはアセトアミノフェンなどの鎮痛剤が、出血があるときは止血剤や貧血対策の鉄剤などが、また症状によっては漢方薬が処方されることもあります。
偽閉経療法 手術のために筋腫を小さくしたいときや、手術時の出血を少なくさせる、閉経が近く今後女性ホルモンの影響が減ると予想される場合などに用いられることが多い治療法です。具体的には薬で女性ホルモンのエストロゲンとプロストロゲンの分泌を抑制し、一時的に閉経と似た状況にして、筋腫を縮小させます。また、筋腫が原因で起こっている、過多月経などの症状を緩和する効果にも期待できます。ただし、女性ホルモンを止めてしまうのは、骨粗しょう症のリスクが上がるなど、体に対する影響が大きいので、薬によっては「投薬は6か月が上限」というものもあります。投薬を中止すると、筋腫の状態や症状が元に戻るリバウンド現象が起きやすく、「疑似」とはいえ、閉経状態になるため、発汗やのぼせなど更年期障害に似た副作用が出やすいのが難点です。

手術療法

手術の適用条件…筋腫が握りこぶしより大きい、症状がひどい、妊娠前で筋腫によって不妊や流産、早産の危険性が高い。

子宮鏡下手術 子宮の入り口から子宮鏡を入れて行う手術です。子宮内腔に突出した粘膜下筋腫を切除します。傷が残らず、場合によっては日帰り手術になることも。一般的には数日から1週間程度の入院が必要です。粘膜下筋腫以外には行えません。
腹腔鏡下手術 おなかに1cmぐらいの穴を3~4か所開け、内視鏡を入れて行う手術です。傷が小さいのがメリットですが、筋腫が大きいと小さく分割して摘出するため、時間がかかり出血のリスクも高くなります。主に筋腫核摘出に対して行います。また膣から子宮全摘出術を行う場合の補助として使用する場合もあります。
開腹手術 へそ下から縦に、5~10cmぐらい切る開腹縦切開と、おへその3~4cm下を5~10cmぐらい切る開腹横切開があります。筋腫の大きさや体格によって切開が必要な範囲は違ってくるため、残る傷の大きさにも個人差があります。開腹手術は、大きな筋腫でも安全に除去できるのが最大のメリットですが、10~14日の入院が必要で、術後の回復に時間がかかるのが難点です。

手術は大きく分けて、筋腫だけを切り取る「筋腫核摘出術」と、子宮を摘出する「子宮全摘出術」の2種類です。どちらの術式がいいのかは、症状や筋腫の位置、個数、今後の人生設計などによって変わってきます。
子どもが欲しい人は極力子宮を残す方法を選ばれます。通常術後3~6か月で妊娠が可能となりますが、出産方法は帝王切開となる場合もあります。
また、今後出産する予定や希望のない人は子宮がんのリスクを下げるためにも全摘出術を選択することが多いようです。「できるだけ傷を残したくない」「子宮は残したい」など、医師に希望をはっきり伝えることは大切ですが、筋腫の大きさ、位置、個数などの条件によっては希望する術式がベストではなく、選択肢が限られることも少なくありません。

その他の治療法

UAE
(子宮動脈塞栓術)
局所麻酔で一方の太ももからカテーテルを入れ、筋腫につながる動脈をゼラチン様物質などでふさぎ、一時的に栄養が供給されないようにして、筋腫をえ死させます。一種の「兵糧攻め」で、筋腫を取り除くような根治とは異なります。術中は痛みを感じませんが、術後に腰痛、腹痛、発熱などの副作用が出やすいといわれています。健康保険の適用はありません。
FUS
(収束超音波療法)
超音波を患部に収束させて筋腫に当て、組織をえ死させる治療法。婦人科のほか、放射線科などで行っている医療機関もあります。治療は寝台にうつぶせになるだけで、麻酔は不要。「多少の熱感はあるが痛みはない」というのが一般的ですが、個人差があり、なかには痛みを感じる人もいるようです。この治療法は筋腫が4個以上、10cm以上だと対象外です。また、筋腫の位置によっても受けられません。健康保険の適用はありません。

Chapter6

費用の目安

子宮全摘術(健康保険が適用される)

  • 腹式手術 …………… 20万~25万円程度
  • 膣式手術 …………… 20万円程度
  • 腹膣鏡下手術 ……… 20万~25万円程度

子宮筋腫核出術(健康保険が適用される)

  • 腹式手術の場合 …… 15万~20万円程度
  • 腹腔鏡下手術 ……… 20万円程度
  • 子宮鏡下手術 ……… 10万円程度

子宮動脈塞栓術
=UAE(健康保険適用なし・全額自己負担)

  • 40万~60万円程度

集束超音波療法
=FUS(健康保険適用なし・全額自己負担)

  • 50万~90万円程度

費用は進行具合や治療方法によって異なります。以上はあくまでも目安です。保険適用の手術でも、差額ベッド代などで費用は変わってきます。

Chapter7

ドクターからのアドバイス

残念ながら子宮筋腫の予防法はありません。ただし、早めに見つけて適切な治療を受ければ命を落とすこともありませんから、「疑わしい」と感じたら、まずは婦人科医に相談を。すぐに手術をせず経過観察になったときは、「症状が変わらないから」「毎回同じだから」といった場合にも、定期的なチェックを怠らないでください。子宮筋腫は急に大きくなる可能性もあるのです。月経の様子や出血量など、気になることはメモしておくといいですね。

小田瑞恵先生

こころとからだの元氣プラザ 診療部長 産婦人科。東京慈恵会医科大学卒業後、同大学付属病院などを経て現職。子宮がんの診断を中心に女性のヘルスケアに取り組んでいる。著書に『女性のからだの悩み早わかりハンドブック』(主婦の友社)など

※掲載内容は2013年4月20日現在の情報です