バセドウ病
バセドウ病は、甲状腺の働きが活発化して、甲状腺ホルモンが必要以上に作られてしまう病気です。甲状腺ホルモンには食物からとった栄養をエネルギー化するなど、体の「代謝」を高める働きがあり、多過ぎると代謝が異常に高まる「甲状腺中毒症」に陥ります。のどの腫れや動悸、息切れ、倦怠感、体重減少(増える場合もある)、ほてりや異常な発汗、手足の震え、眼症状などの症状があります。無月経になることもあるため、婦人科などほかの診療科で見つかることも多い病気ですが、初診は内科、できれば内分泌科の専門医がいる医療機関を受診しましょう。
バセドウ病ってどんな病気?
発症する年齢によって症状がことなる
バセドウ病は甲状腺機能疾患で、女性に多い病気です。甲状腺疾患が専門の伊藤病院(東京都渋谷区)で2006~2010年の初診患者を調べたところ、男性の患者数を1とすると、女性は5.4倍になるという結果になりました。また、同じ調査から発症年齢は20歳から40歳が最も多く、思春期より前の発症は少ないことがわかっています。60代以降に発症する患者数もゼロではなく、なかには80代で発症したケースもあります。
バセドウ病は発症年齢によって初発症状が違うのも特徴の一つ。若い患者は首やのどの腫れが強く出ることが多く、代謝が活発になり「やせる病気」というイメージがあるかもしれませんが、食欲が増進し体重が増えることもあります。逆に、60代以降に発症した患者は、のどの腫れが小さく、体重減少や動悸などの症状が強く出ます。高齢者の体重減少や倦怠感は「年をとったから」と見過ごしがちなので注意が必要です。
また、バセドウ眼症といって、目がカッと見開いた感じに見える、眼球が出て見える、まぶたが腫れる、さらに物が二重に見えるなどの視力障害が出ることがあります。バセドウ眼症の治療には、バセドウ病の専門医と眼科医の連携が欠かせません。
診断の流れ
血液検査で診断できることがほとんど
まずは気になる症状を医師に話し、血液検査を受け、血中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの量、自己抗体の量を調べてもらいましょう。その日のうちに診断結果が出るところもありますが、病院によっては1週間ほどかかることもあります。
ほとんどの人が血液検査でバセドウ病かどうかがわかりますが、超音波検査で病気の強さを客観的に見るために甲状腺の大きさを測定したり、がんの合併がないかを調べます。場合によっては放射性ヨウ素検査、または腫れの性質を知るために甲状腺の細胞をとる穿刺(せんし)吸引細胞診などが行われることがあります。また、バセドウ眼症など目の症状が出ることも多いので、眼科の検査を合わせて受けることが必要な場合もあります。
原因と予防
自己免疫システムが関係している
バセドウ病の発症メカニズムはまだ解明されていませんが、自己免疫システムの異常が原因ではないかと考えられています。私たちの体の免疫は、体内に菌やウイルスなどが入ってくると、それを「異物」と認識して攻撃します。バセドウ病の場合は甲状腺にある甲状腺刺激ホルモン受容体が「異物」と間違われて攻撃されてしまい、甲状腺ホルモンの過剰な分泌につながっています。
バセドウ病にはなんらかの遺伝的な要因が関与していると考えられていますが、親や兄弟がバセドウ病でも必ず発症するわけではありません。遺伝的な要因が約7割、ストレスなど環境的な要因が約3割で、一卵性の双子でも2人とも発症する確率は2~3割程度だと言われています。
鏡で自分の顔つきをチェックしよう
はっきりした原因がわからないので、決定打となる予防方法はまだありません。また、初期症状の動悸(心臓病)や体重減少(がん)、無月経(婦人科疾患)などはほかの病気と間違われやすいので、早く発見して治療を受けることが大切です。ほかの疾患で出にくい症状として、首の腫れ(太くなったと感じる人も)、眼球の変化(飛び出して見える、ギラギラしているなど)などがあるので、鏡を見るときは首や目の状態もチェックしましょう。