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骨粗しょう症 【監修:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 臨床研究推進センター部長 森聖二郎先生】

骨の密度が低くなってもろくなり、骨折しやすくなる骨粗しょう症の患者数は、予備群を含め1,300万人いるといわれています。女性の発症率は男性の3倍と、女性に多い病気の1つで、閉経後の50代女性では10人に1人、60代女性では3人に1人がかかっていると推定されます。自分の骨の状態を知り、骨の健康を維持することで、骨折のリスクを減らしましょう。

Chapter1

骨粗しょう症ってどんな病気?

骨粗しょう症は、加齢などにより、骨折のリスクが高くなる骨の疾患です。実際に骨折をして骨の検査をしたときに、病気がわかることもあります。
美容に関心のある女性なら、肌のターンオーバー(代謝)がおよそ28日周期であることはご存じかもしれません。硬くて、一見変化しないように思える骨にもターンオーバーがあり、古くなった骨を破壊する「破骨細胞」と、新しい骨を作っていく「骨芽細胞」の働きで、およそ3か月かけて部位ごとに代謝を繰り返しています。全身では7年ぐらいかけて新しい骨に生まれ変わっていきます。
骨の代謝は若い頃は活発で、女性の最大骨量は25歳ぐらいにピークを迎え、閉経を迎える50歳頃まではこの骨量を維持します。女性ホルモンが骨の代謝に大きな役割を果たしているからです。しかし、ホルモンの分泌量が激減する閉経の頃から女性の骨量はどんどん減っていき、骨はもろくなっていきます。このため、特に閉経前後の女性は骨の状態に注意が必要です。

女性の骨量の変化

Chapter2

気になる症状は?

骨粗しょう症自体は進行がゆっくりで、命に関わる病気ではありません。ただ、骨粗しょう症でもろくなった骨は骨折しやすく、回復に時間のかかるケガの要因となることもあります。骨折が寝たきりの生活を引き起こすことも少なくありません。現在「要介護」の状態でケアを受けている人の約1割は「骨折がきっかけ」だったというデータもあります。
例えば、転んでとっさに手をついた際に手首を骨折するケースがよく見られます。加齢などにより運動能力が落ちた人は、転んだときに手をつくこともできずに直接強く腰を打ち、大腿(たい)骨の骨盤側の付け根や脊椎を骨折することもあります。
また、気づかないうちに脊椎を骨折している人もいます。骨粗しょう症が原因で骨が変形して起こる脊椎の骨折は徐々に進行するため、患者さんの3分の2が無自覚、痛みを感じた残りの3分の1の人たちも「鈍痛がするくらい」「筋肉痛だと思った」いう程度です。強い痛みがないので、脊椎の骨折や変形に気がつきにくく、発見が遅れがちであることも、早期治療を難しくしている一因です。
・壁に背中をつけても、背筋が伸びない、頭がつかない
・腰が痛い
・この2年くらいで急に身長が低くなった(25歳のときからマイナス4㎝ぐらい)
といった症状がある場合は、かかりつけ医や整形外科に相談してみましょう。

Chapter3

診断の流れと治療法

自分の骨密度や骨の状態は、検査してみないとわかりません。女性の骨量が大きく変化する閉経の頃、50歳を過ぎたら、まず病院で骨の状態を調べてもらいましょう。
骨粗しょう症外来などで、大腿(たい)部や腰椎の骨量を計測できるDXA(デキサ)と呼ばれる検査を受けて、専門医の診断を受けることをお勧めします。近くに骨粗しょう症外来がない場合は専門知識のある整形外科医に相談してみましょう。
検査結果の目安は、25歳から閉経までの最大骨量を基準に、そのときの骨量が80%以上あれば正常、70~80%なら骨量の減少が見られ要注意、70%以下は具体的な治療が必要といわれています。
検査の頻度は、正常な場合は5年ごと、減少が見られる人は1年ごとが目安になります。
実際の診断ではDXAのほか、糖尿病や膠原(こうげん)病、リウマチなどほかの病気がないか、今までに骨折の経験はないか、家族に脊椎や大腿(たい)部を骨折した人がいないかなど問診や診察、骨の状態を調べる画像診断(X線検査)を行います。骨の代謝の状態を知るための血液検査や尿検査を行うこともあります。
治療の目的は大腿(たい)部付近の骨と脊椎の骨折予防です。すでに骨折がある場合には再骨折を抑え、寝たきりにならないようにすることです。中心となるのは投薬で、骨を壊す細胞の働きを抑えて骨の代謝を緩やかにする薬や、食品からカルシウムを効率よくとり、体内でしっかり使えるようにする活性型ビタミンD3などの薬が使われます。

また、コルセットなどの関節の動きを助ける装具で、できるだけ患部の骨に負担がかからないようにしたり、リハビリで骨にかかる負担を軽くする筋肉の使い方を学んだりします。