Chapter5

検査と診断

子宮頸がん検診だけでなく40歳以降は子宮体がん検診を

子宮頸がん検診だけでなく40歳以降は子宮体がん検診を

職場の健康診断や人間ドックのほか、自治体でも子宮がん検診を受けることができます(検診内容や費用は、健康保険組合や自治体によって異なります)。ただし、職場や自治体で行う健康診断では、子宮頸がん検診がほとんどです。子宮体がんのリスクが高くなる40歳以降は、年に1回程度検診を受けるようにしましょう。また、子宮頸がんについては20、25、30、35、40歳で自治体から検診無料クーポンが配布されることになっています。

身体的負担の小さな検査方法も

子宮頸がん検診と子宮体がん検診では、細胞診の方法が違います。医療機関によって多少の違いはありますが、ほとんどは以下のような流れで検診が行われます。

1. 問診

1. 問診

生理が始まった時期、または閉経時期、生理の状態や気になる症状、妊娠・出産の経験など、診断の治療に関わることを聞かれます。

2. 内診

2. 内診

医師が膣内を触ってみて、頸部や膣の状態をチェック。おなかを軽く押しながら、子宮や膣の状態、卵巣の位置なども確認します。子宮の形や表面の状態、炎症の有無などを直接見るために、膣鏡を膣の中に入れて見ることもあります。緊張で体がこわばっていると痛みを感じることがありますから、できるだけリラックスするように心がけましょう。

3. 細胞診

3. 細胞診

子宮頸がん:柔らかい綿棒やブラシのようなものを膣に入れ、子宮頸部にある粘膜を軽くなでるようにして細胞をこすりとります。痛みはほとんどありません。採取した細胞を顕微鏡で調べると、がん細胞だけでなく、前がん病変まで発見できます。
子宮体がん:スプーンのようにわい曲した細長い器具を子宮の奥まで挿入し、子宮内膜や子宮壁の組織を採取します。このとき少し痛みがあり(痛みの感じ方は個人によって異なります)、検査後数日間は少量出血することがあります。しかし、検査による出血は心配ありません。

4. 超音波(エコー)検査

細い棒状の超音波プローブを膣内から挿入して、子宮内膜の状態を調べます。近年、超音波検査機器の診断精度が向上しているため、子宮内膜の厚さや前がん状態まで見つけることができます。細胞診のような痛みはありません。超音波検査で異常が見つかってから細胞診でより詳しく調べるようにすれば、負担が少なくなります。また、子宮体がんだけでなく、卵巣がんなども調べることができます。

Chapter6

どんな治療があるの?

手術、放射線治療、化学療法が中心

ほかのがん治療と同じく、手術、放射線、抗がん剤による化学療法を中心に行います。子宮体がんではホルモン療法も行われます。がんの広がりや進み具合、合併症の有無など、一人ひとりの病状に応じて治療法は検討されます。治療後に妊娠・出産の希望があるかどうか、家庭や仕事の状況など自身の希望も伝え、納得いく治療ができるよう医師とよく話し合ってください。

子宮頸がんの治療は手術が基本

早期であれば手術で切り取るのが基本です。ごく初期の子宮頸部のがん組織を円錐(えんすい)状に切り取る円錐切除術なら、開腹手術も必要なく、日帰りでできる施設もあります。手術後1か月半程度で性生活も可能です。妊娠・出産もできます。進行している場合には、子宮全摘出術、卵巣や卵管、リンパ節切除など、広い範囲で切除することになります。また、放射線治療と化学療法を併用する治療、手術後に追加で行われる放射線治療、再発・転移のための化学療法などがあります。

子宮体がんも手術中心に薬物治療を併用

最も一般的な治療は手術です。早期の場合は、子宮全摘出に加え、卵巣や卵管も切除します。さらに進行している場合は、子宮、卵管、卵巣、膣など広い範囲で切除。リンパ節郭清(かくせい)を行うこともあります。放射線治療は手術後に行うことが多いですが、高齢や病気により手術が行えない場合に放射線治療単独で行うこともあります。病気が子宮外まで広がっている場合は、全身的治療として化学療法を行います。さらに再発のリスクが高い場合は、化学療法に代わる全身的治療または補助的な治療としてホルモン療法が行われます。

Chapter7

子宮がん治療 費用の目安

子宮がん検診費用

自費で受けると13,000~15,000円程度
職場や自治体で受けると無料~2,000円程度

手術費用

〈公的医療保険適用分〉 ※自己負担3割の場合

子宮頸がん: 子宮頸部円錐除去術(入院4日間) 自己負担7万~10万円
子宮体がん: 単純子宮全摘出術(入院10日間) 自己負担22万~30万円

費用は進行具合や治療方法によって異なります。以上はあくまでも目安です。保険適用範囲でも、使用する薬の種類などによっても金額は変わります。このほか、差額ベッド代や保険適用外の治療費が必要になる場合もあります。

Chapter8

ドクターからのアドバイス

これまでは「痛みがある」ということから子宮体がん検査を敬遠する人もいましたが、エコーなどの診断機器が高精度になったおかげで、患者さんの身体的負担を少なく、前がん状態からごく初期のがんまで見つけられるようになりました。子宮頸がんも簡単な検査でかなり早期に発見することができます。日本では婦人科に行くことをためらう女性が少なくありませんが、婦人科受診は子宮がんの早期発見はもちろん、女性の健康状態を知るうえで大変重要なことです。定期的な検診も大事ですが、少しでも異変があったらためらわずに受診できる婦人科のかかりつけ医がいることが理想です。娘さんを持つ人は、娘さんにも婦人科検診・受診の大切さを伝えていってほしいと思います。

出井知子先生

ともこレディースクリニック表参道 院長。日本大学附属板橋病院、厚生中央病院で、主に婦人科がん治療の臨床と研究に従事。2008年より現職。

※掲載内容は2013年4月20日現在の情報です