カラダとココロの健康アドバイス

骨盤底筋トレーニングで尿漏れ予防

加齢や、出産時のダメージなどによって緩みやすい骨盤底筋。筋肉の緩みが原因でおこる軽い尿漏れなどの予防、改善にセルフトレーニングが有効です。ゆったりとした呼吸をしながらトレーニングを続けてみましょう。

Point1

骨盤底筋ってどんな筋肉?

骨盤底筋群とは、文字どおり骨盤の底にハンモックのように位置し、尿道・腟・肛門を囲む小さな筋肉の集まりです。これらの骨盤底筋群は、膀胱・子宮などの内臓を支えるほか、尿の出口を閉める蛇口のような働きをしています。股関節周辺の筋肉や背骨を支える筋肉ともつながっていて、これらに関連する筋肉が呼吸と連動して動きながら、姿勢を整える役割もはたしています。

特に女性の骨盤底筋は、妊娠・出産によって一部の筋肉は約3倍にも引き伸ばされるため、線維が傷つくことがあります。ある程度は戻るのですが、戻りきらないまま更年期や閉経を迎えれば、女性ホルモンの減少によって機能低下が進みやすくなります。出産経験の有無にかかわらず、加齢によって骨盤底筋は硬くなったり弱くなったりしてきます。ゴムが伸びきってしまうように、本来の筋肉の働きを発揮できなくなるのです。

骨盤底筋は呼吸と連動します。

息を吸うとき→横隔膜(肺の下にある呼吸に関わる筋肉)が収縮し、骨盤底筋群が下がる
息を吐くとき→横隔膜が緩み、骨盤底筋が上がる

Point2

骨盤底筋が緩むとさまざまな症状の原因に

骨盤底筋が硬くなったり緩んだりすると、尿漏れが起こりやすくなります。くしゃみをした拍子などに漏れる(腹圧性尿失禁)、尿意を感じてから排尿まで間に合わずに漏れてしまう(切迫性尿失禁)などの症状が見られます。また、子宮など内側の臓器を支えきれずに臓器が下がり、それらが腟から出てきてしまう疾患もあります(骨盤内臓器下垂・骨盤内臓器脱)。緩みは骨盤や背骨、周囲の筋肉も影響しますので、腰痛やぽっこりお腹につながりやすくなりますし、直腸付近にもたるみが出てしまうと、そこに便がたまりやすくなるため便秘になりやすいといわれています。
これらの症状の予防や改善のために、骨盤底筋トレーニングを行いましょう。

Point3

予防のポイントは姿勢・小休止・ストレッチ

① あおむけになり、膝を立てる。膝と膝の間はこぶし1個半程度開ける。つま先は足側の壁に向かって真っすぐ向ける

②骨盤が前後に傾かず真っすぐになっていることを意識する(両手の親指同士と人さし指同士をつけて三角形を作り、おへその下あたりに乗せ、その三角形が床と平行になるようにする)。腰の後ろが反りやすい人は背中を丸めるようにするとよい。

③息を吐きながら尿道、腟、肛門周りをキュッと締める。おしりの外側に力が入りすぎないよう、内側を軽く引き上げるようなイメージで。このとき手で触っている下腹部が膨らんでこないように注意する。

④息を吐き終わった反動で自然に息を吸うときに、骨盤底筋もフワッと緩める。


骨盤底筋以外の部分に力が入らないように、ゆったりとした呼吸を意識し、横隔膜と連動させるように骨盤底筋を締めたり緩めたりすることが大切です。

①~④を8~12回くり返し、これを1セットとし、1日2~5セット行いましょう。ただし、骨盤底筋は手足の筋肉と違い、やりすぎると疲れて動かしにくくなり、周辺の違う筋肉に力が入ってしまいがち。多くやるほど効果的なわけではなく、回数を守りながら毎日コツコツと継続することが大切です。

骨盤底筋を働かせるポイント

自分がイメージしやすい方法を活用しながら、コツをつかみましょう。

・ハンカチを広げた上に座ったと想像して、ハンカチの真ん中を腟でつまみ上げる

・おしりの骨を恥骨に近づける

・おしっこを止める感覚(実際におしっこを止めるのはNG)

※感覚が分かりにくい人は、お風呂の中で中指の第2関節くらいまでを腟から入れてキュッと締めたり力を抜いたりする練習をしてみる方法もあります。

Point4

骨盤底筋を守るために日常生活で気をつけたいこと

全身のストレッチも大事

筋肉が硬く動きにくくなっているとトレーニングの成果も出にくいため、ストレッチで筋肉を柔らかく保つことが大切です。骨盤底筋と連動する横隔膜を動かす上半身のストレッチ、股関節やおしり付近の筋肉を伸ばすストレッチなども取り入れましょう。

トイレでの姿勢

いきむと内臓が下に押されるように腹圧がかかり、骨盤底筋への負担になるので、トイレでの排便・排尿時には「考える人の像」のような腰が伸びた前傾姿勢で。腹圧をかけずにリラックスして排せつすることを心がけましょう。

座り方・日常動作

腰が丸まった猫背の姿勢は骨盤底筋が働かないため、骨盤を立てた座り姿勢を習慣づけましょう。ただし、腰を反らすのも逆効果なので、おしりの後ろからクッションをドアストッパーのように差し込んでサポートするのがおすすめ。
日常生活でも深い呼吸を意識して、重いものを持ったり、子どもを抱き上げたりする際は息を吐きながら動きましょう。

監修

山崎 愛美(やまざき かなみ) 理学療法士 Woman’s Body Labo /産後リハビリテーション研究会代表
海外で行われている産前産後の母親に対するリハビリテーションに感銘を受け、医療職に向けた産前産後の母体へのリハビリを提案する「産後リハビリテーション研究会」を立ち上げる。雑誌・ウェブコンテンツ等の執筆・監修も行う。