女性が気をつけたい病気 女性に多い病気や症状について解説します 女性が気をつけたい病気 女性に多い病気や症状について解説します

月経困難症 【監修:こころとからだの元氣プラザ 産婦人科/
東京慈恵会医科大学 産婦人科 講師 小田瑞恵先生】

月経困難症

月経困難症とは月経中やその前後に、腹痛や腰痛、頭痛などの痛みが強く出て、日常生活に支障をきたす状態をいいます。一般的な月経痛との違いは「日常生活を脅かす」という点。市販の鎮痛剤を飲んでも痛みが止まらない、仕事や学校を休むほどつらいといった場合は、一度婦人科医に相談しましょう。

Chapter1

月経困難症ってどんな状態?

日常生活に支障をきたす月経痛は「月経困難症」

ある機関の調査では16~49歳の女性の7割以上に月経痛があり、そのうち約5割が鎮痛剤を使用したことがあるそうです。発現症状には個人差があり、なかには激痛で動けなくなり救急搬送される人も。症状が重い場合は子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れていることもあるので、婦人科で診てもらってください。特に、痛みがだんだん強くなる、月経以外のときに不正出血があるなどの変化を感じたら受診を急ぎましょう。

月経困難症は原因によって2種類に区別される

月経困難症には「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」があります。若いときは子宮の未成熟が原因で機能性月経困難症が多く、30代以降は子宮内膜症や子宮筋腫などが増えてくることから、器質性月経困難症が多くなるといわれています。

機能性月経困難症

子宮筋腫や子宮内膜症などの病名がつく異常はないけれど、子宮の未成熟や体質などが原因で症状が起こります。子宮内膜で作られるプロスタグランディン(子宮を収縮させたり、血行を悪くする作用がある痛み物質)の過剰分泌が原因のことが多いと考えられています。また、作用メカニズムはよく分かっていませんが、ストレスや冷えが原因の血行不良などが改善されると、症状が緩和されることもあります。

器質性月経困難症

子宮内膜症や子宮筋腫などが原因で起こっているもの。トラブルの原因になっている病気とそれによって生じる月経痛に対する治療を行います。今まで月経は軽かったのに量が増えた、月経痛が我慢できなくなってきたなど、だんだんと症状が強くなる場合は器質性の可能性があるので、婦人科を受診しましょう。

あなたの月経の量は正常?

自分の月経量が多いのか少ないのか、なかなかほかの人と比べてみることはできません。「通常」の目安としては、「多い日に昼用のナプキンを2時間ごとに替える程度でOK」。「過多月経」の目安は「昼でも夜用でないとダメ」「レバーのような血の塊がたくさん出る」など。こんな症状がある方は受診することをおすすめします。

Chapter2

受診したときの診察の流れ

※必ず上記通りということではありません。

まずは気になる症状を医師に話し、内診と超音波検査で子宮や卵巣などに問題がないかどうかを調べます。貧血や子宮内膜症の疑いがある場合は、あわせて血液検査をすることもあります。

Chapter3

どんな治療があるの?

体に異常がなければ、鎮痛剤を使って痛みを抑える

問診と検査で子宮や卵巣などに異常がなければ、症状を緩和する鎮痛剤が処方されることが多いようです。鎮痛剤はプロスタグランディンという「痛み物質」を抑えるもので、痛みが強くなる前に服用しておきます。「鎮痛剤を連用すると効かなくなるのでは?」と、心配から我慢してしまう人もいるようですが、月経の期間に服用するレベルなら問題はありません。医師の指示に従って、痛みが出たら我慢しないで薬を飲みましょう。鎮痛剤が効かない場合は「低用量EP配合剤」「低用量ピル」の使用がすすめられています。

「低用量EP配合剤」「低用量ピル」で月経不調をコントロール

鎮痛剤を服用するほかに、低用量EP配合剤、低用量ピルが処方され、月経不順をコントロールしながら、痛みの改善状態をみる場合もあります。どちらの薬も処方を受けるためには、1~3か月に1回の受診と、場合によっては定期的な検査が必要です。

低用量EP配合剤

排卵を抑制することでホルモンの分泌を適度に抑えて月経量を少なくし、痛みを緩和します。現在、日本で使われている低用量EP配合剤は「ヤーズ配合錠」と「ルナベル配合錠」の2種類あります。排卵を抑制することで、過剰な子宮内膜の増殖を抑えて月経痛をコントロールします。鎮痛剤が効かないようなひどい痛みを緩和することができます。

低用量ピル

低用量ピルは避妊薬として使われる薬で、排卵を抑えることで月経が軽くなり、症状を抑える効果が期待できます。低用量EP配合剤と低用量ピルどちらを選ぶかは人それぞれ。産婦人科医に相談しましょう。低用量EP配合剤は健康保険が適用されますが、低用量ピルは適用されません。

漢方で痛みを緩和する方法も

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)や桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)などの漢方薬も冷えを抑え、血流を促進する効果があるので、処方されることがあります。

Chapter4

痛みを和らげるためのセルフケア

体を冷やさないように気配りを

体を冷やさないように気配りを

適度な運動を

月経痛の感じ方は人によってさまざまです。一般的に立ち仕事の人、逆に1日中座りっぱなしで運動不足な人も痛みが出やすいともいわれています。ふだんから適度な運動を生活に取り入れて、血流アップを心がけましょう。

腹部を温める

「冷え」を防ぐことも大事。温め効果が高い下着や腹巻きを着用するだけで、楽になる人もいます。また、カイロなどを使って上手に温めるのも有効です。

※低温やけどには注意しましょう。

体の内側も冷えないように

体の外側から温めることも大切ですが、氷の入った冷たいドリンクなど、体を冷す飲み物や食べ物は控えめにして、体を内側から冷やさないようにしましょう。

Chapter5

費用の目安

低用量ピルは1周期(1シート)2,000~3,000円が目安。

※治療費は医療機関によって異なります。

※一部取り扱いをしていない医療機関もあるので、事前にピルを扱っているかどうかの確認をすることをおすすめします。

Chapter6

ドクターからのアドバイス

生理痛だからと我慢をせずに、積極的に婦人科医に相談してください。初診のとき「何を聞かれるの?」と心配される方もいるようですが、今一番つらい症状を伝えていただければ大丈夫。それから「最後の月経がいつごろだったか」「月経はだいたい周期的に来ているか」「不正出血はないか」ぐらいは、自分の体に目を向ける習慣をつけるといいですね。

小田瑞恵先生

こころとからだの元氣プラザ 診療部長 産婦人科。東京慈恵会医科大学卒業後、同大学付属病院などを経て現職。子宮がんの診断を中心に女性のヘルスケアに取り組んでいる。著書に『女性のからだの悩み早わかりハンドブック』(主婦の友社)など

※掲載内容は2013年4月20日現在の情報です