Chapter4

治療方法は?

まずは投薬による治療

バセドウ病の主な治療には、「薬(抗甲状腺薬)による治療」「放射性ヨウ素(アイソトープ)治療」「甲状腺の手術(全摘出・亜全摘)」の3つがあります。最初のステップは薬で、医師の指示どおりに服用しても効かない人や副作用が強く出る人はほかの治療法を試すことになります。

抗甲状腺療薬の治療法

抗甲状腺療薬の治療法
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出典:
『よくわかる最新医学 甲状腺の病気の最新治療 バセドウ病・橋本病・甲状腺腫瘍ほか』
(主婦の友社)をもとに編集部で作成

抗甲状腺薬治療

治療のファーストチョイスである抗甲状腺薬は、「相性のいい薬」と「効く量」の見極めが重要です。うまくいけば治療開始から1~3か月で9割以上の人が体調の改善を感じられるくらいに回復し、血液検査の結果にも効果が見られます。効きが悪いようなら薬の種類や量を調整していきます。この「効き」を見極めるためには、医師の指示どおりに薬を飲んでいるかどうかが重要です。効き目と副作用をチェックするため、初診から2か月は2週間ごとに通院し、血液検査や医師の診察を受けましょう。

バセドウ病は「治りにくい」と思われがちですが、3年ぐらい薬でしっかり治療を続ければ寛解(病気が収まった状態)となる率は3割ぐらいにもなります。大人の場合、再発率は2割ぐらいで、多くは1年以内に再発するので、寛解しても最初の1年間は3か月に1回ぐらい、その後は半年に1回ぐらいの通院・検査が勧められています。

放射性ヨウ素(アイソトープ)治療

ごく弱い放射線を発する放射性ヨウ素のカプセルを飲む治療法です。ヨウ素には体の中で甲状腺に集まる性質があります。それを利用して、甲状腺で弱い放射線が出るようにして、暴走している細胞の力を弱めます。薬が効かないときや副作用が強いとき、再発したときなどに行われることが多い治療法ですが、欧米では「通院回数が少なくて、副作用がほとんどない」と、薬より高く評価されることもあるようです。

放射性ヨウ素は甲状腺で数週間働き、3~6か月で体外へ排出されますが、効果は何年も続き、悪化したらまた繰り返し治療を行うことができます。

手術

ほかの合併症があったり、再発を繰り返したり、治療を急ぐ場合は手術で甲状腺を取り除きます。手術には甲状腺のほとんどを切除する「全摘出」と、一部を残す「亜全摘」があります。全摘出の場合、再発の心配は全くありませんが、生涯、甲状腺ホルモンに代わる薬を飲み続ける必要があります。部分的に甲状腺を残す亜全摘は、「薬を飲まなくなる」ことが目標ですが、甲状腺をどのくらい切り取るかによって、甲状腺機能のコントロールが難しいのが欠点です。近年、手術の場合は全摘出が勧められています。

3つの治療法の比較表

3つの治療法の比較表
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出典:
『図解甲状腺の病気がよくわかる 最新治療と正しい知識』(日東書院)

Chapter5

費用の目安

※自己負担3割の場合

  • 血液検査 ………………………… 
    5,000~6,000円
  • 超音波検査 ……………………… 
    1,000円
  • アイソトープ治療(外来) ……… 
    4万円前後
  • 手術 ……………………………… 
    12万~22万円ぐらい

費用は症状や治療期間によってことなります。上記はあくまで目安です。保険適用範囲でも、使用する薬の種類などによっても金額は変わります。このほか、差額ベッド代や保険適用外の治療費が必要になる場合もあります。

Chapter6

ドクターからのアドバイス

バセドウ病は「命にかかわる病気ではない」と思われがちですが、治療せずに放置したり、適切な治療を継続して受けていないと、どんどん体力が落ちます。カゼをひいたり、歯を抜いたりといった「ちょっとしたこと」が引き金になって、感染症から高熱や頻脈、意識混濁などを招き、最悪の場合は、心停止などを起こし死につながることもあります。

10代から20代前半では、体重が増える場合もありますが、それ以上の年齢層では、急激な体重減少に注意が必要です。定期健診の血液検査では、コレステロール値の急降下などにも注意を払いましょう。

吉村 弘先生

伊藤病院(甲状腺疾患専門)内科部長。大阪市立大学医学部卒業後、大阪市立大学病院勤務を経て、伊藤病院勤務。2003年より現職。甲状腺疾患全般を扱い、特にバセドウ病治療に用いられる抗甲状腺薬の副作用の重篤化の防止に取り組んでいる。