Chapter4

診断の流れと治療法

更年期障害と思われる症状があり、特にその症状が生活に影響を及ぼすような場合は、ぜひ婦人科の診断を受けてみてください。最近は、「更年期外来」や「女性外来」を掲げる病院もありますが、必ずしもそうした専門外来である必要はありません。

問診ではどんな症状を感じているか、家庭や職場でストレスを感じる要因があるかなどを伝えます。診断に際しては、エストロゲンの分泌量を確認する血液検査も行われます。婦人科の他の病気、婦人科以外の病気が不調の原因となっている場合もあるので、血液検査、内診、骨密度測定、甲状腺の検査、子宮がん検査、マンモグラフィーなどを行い、結果によっては、それぞれの専門家に紹介されることもあります。

診療の流れ

1.問診 2.血液検査 3.(必要な場合)内診、骨密度測定、甲状腺の検査、子宮がん検査、マンモグラフィーなど 4.診断 5.治療方針の決定 1.問診 2.血液検査 3.(必要な場合)内診、骨密度測定、甲状腺の検査、子宮がん検査、マンモグラフィーなど 4.診断 5.治療方針の決定

治療には、「生活改善」「市販薬」「専門治療」という三つのアプローチがあります。生活改善では、ストレス軽減、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動などを通じて、症状の緩和をめざします。市販薬では、女性ホルモンと同様の作用をもたらす成分(大豆イソフラボンなど)入りのサプリメント類のほか、育毛剤、外陰部の違和感や性交痛を緩和するものを使用します。専門治療には、次のようなものがあります。

漢方療法

いちばん困っている症状を中心に、体全体を治療。漢方薬の効き目は穏やかだが、長期に服用できる。代表的なのは、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)。

ホルモン補充療法(HRT)

女性ホルモンを補う方法。エストロゲン製剤には、内服薬(錠剤)、肌に貼るパッチ、肌に塗るジェルという三つのタイプがある。ホルモン補充療法には副作用もあるので、薬の種類、用法、用量については主治医とよく相談のうえ開始する。

低用量ピル

避妊が必要な場合。アンチエイジング目的では使用できない。

精神療法

精神症状が強く、生活に支障がある場合に、安定剤や抗うつ剤を使用。カウンセリングなどの心理療法が必要な場合も。

Chapter5

費用の目安

診察、漢方療法、ホルモン補充療法には健康保険が適用され、診療費+処方料+薬代で2,000~5,000円程度です。低用量ピルは健康保険の適用外です。病院やクリニックによっては、診療時に相談料、精神療法時にカウンセリング料などを別途設定している場合もあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。

【保険診療】

  • 漢方療法 …………………………………… 
    処方薬1,000~2,000円前後/28日分
  • ホルモン補充療法(HRT) ……………… 
    処方薬1,000~2,000円前後/28日分

【自費診療】

  • 低用量ピル ………………………………… 
    処方薬2,500円程度/28日分

Chapter6

ドクターからのアドバイス

月経がなくなること、年齢を重ねることに言いようのない不安や寂しさを覚える方が多いようです。でも、世の中の60代の方々はお元気だと思いませんか? 更年期を乗り越えれば、必ずいい時期が来ると信じて、一人で悩まずに上手に乗り切りましょう。
更年期は10年後、20年後を健康に過ごすための準備の時期でもあります。閉経後は高血圧、高脂血症、糖尿病などのリスクが上昇します。更年期に不調を感じるのは、食事や生活に改善の余地があるサイン。肥満のある方は適正体重に、タバコを吸う方は禁煙し、生活習慣病の予防に取り組みましょう。お友達との楽しい時間を持つことも大事です。
また、男性にも更年期(LOH症候群)があるのをご存じですか? 自身もつらい時期ですが、パートナーの心身を思いやることも大切です。

更年期女性のための3か条 第1条 かかりつけ医をもちましょう 婦人科医は女性のライフパートナー。心身の不調、不安について、どの診療科に相談すればいいか分からなければ、まず婦人科へ相談を。 第2条 素直に助けを求めましょう 一人で解決できないことは多いもの。我慢せずに、素直に「助けて!」と言えば、楽になります。 第3条 どう生きるかを考えましょう 更年期以降は、健康で、人としていかに魅力的でいられるかが大事。50歳までに理想の姿をめざし、自分が楽しめることを見つけましょう。 更年期女性のための3か条 第1条 かかりつけ医をもちましょう 婦人科医は女性のライフパートナー。心身の不調、不安について、どの診療科に相談すればいいか分からなければ、まず婦人科へ相談を。 第2条 素直に助けを求めましょう 一人で解決できないことは多いもの。我慢せずに、素直に「助けて!」と言えば、楽になります。 第3条 どう生きるかを考えましょう 更年期以降は、健康で、人としていかに魅力的でいられるかが大事。50歳までに理想の姿をめざし、自分が楽しめることを見つけましょう。

宮益坂メリーレディースクリニック
院長 長岡 美樹先生

日本産科婦人科学会認定医、日本女性医学学会認定医。1990年、日本大学医学部卒業。日本大学医学部附属板橋病院産婦人科入局。大学関連病院勤務を経て、2011年、宮益坂メリーレディースクリニック開院。更年期女性に寄り添う診療を実践。