Chapter4

どんな検査を受けるの?

不妊に関する検査は婦人科医院でもできますが、不妊治療の専門病院では行える検査の種類、内容が増えるので、できれば不妊治療の産婦人科専門病院で検査を受けましょう。婦人科病院の検査で異状がないと診断され、その後も1年以上妊娠しないようなら、専門病院の検査を受けてください。
まず、問診では、月経周期やこれまでの体の状態、病歴、あるようならストレス要因やダイエット内容などを伝えます。基礎体温の記録がある場合は、それも持参しましょう。
次に内診では膣や子宮、おりものの状態や卵巣の状態を見て、子宮の発達状況や子宮筋腫の有無などを確認します。
そして、基本的な検査として、血液検査、尿検査、超音波検査、子宮卵管造影を行います。時期的には月経後がよいでしょう。ただし、ホルモンを調べる血液検査は月経周期に合わせて行う必要があるため、すべてを検査するには2~3か月ほどの間に数度の通院が必要です。また、必要に応じて、子宮鏡検査や頸管粘液検査などの精密検査を行います

基本的な検査

ホルモン検査(血液検査・尿検査)

女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)、下垂体ホルモン(FSH、LH)の値や下垂体機能などを調べます。そのほか、貧血検査や感染症検査なども行います

超音波検査

膣より超音波機器を挿入し、卵巣や子宮の状態を調べます。子宮筋腫や多のう胞性卵巣、卵巣腫瘍の有無や大きさ、卵胞の大きさ、子宮内膜の厚さなどがわかります

子宮卵管造影検査

膣内にカテーテル(細い管)を挿入し、造影剤を注入してX線撮影をします。子宮の形状、卵管の癒着や卵管通過障害の有無などがわかります

診療の流れ

1.問診 2.内診 3.(基本的な検査)血液検査、尿検査、超音波検査(月経周期に合わせて)、子宮卵管造影検査 4.(必要に応じて受ける検査)子宮鏡検査など 5.診断 6.治療方針の決定 1.問診 2.内診 3.(基本的な検査)血液検査、尿検査、超音波検査(月経周期に合わせて)、子宮卵管造影検査 4.(必要に応じて受ける検査)子宮鏡検査など 5.診断 6.治療方針の決定

月経周期に合わせて行う基本的な検査

Chapter5

どんな治療を受けるの?

診察と検査で、不妊の原因が判明した場合はその原因の治療を行い、原因が特定できない場合は不妊治療に進みます。
不妊治療には大きく分けて、タイミング療法と人工授精、体外受精があります。希望に応じて、カウンセリングや漢方薬、自然補完療法(ヨガや鍼灸(しんきゅう)など)を並行して取り入れることもあります。

タイミング療法

尿・血液検査や超音波検査、基礎体温表によって排卵日を特定し、排卵前日~当日に性交のタイミングを合わせて自然妊娠をめざす方法。ホルモン注射や内服薬で排卵を誘発することもあります

人工授精

予測した排卵日の前日または当日に、採取した精子を洗浄、濃縮して子宮内に入れ、体内での自然妊娠をめざします

体外受精

排卵誘発剤やピルを用いて排卵の誘発を行い、成熟した卵子を採取します。卵子と洗浄、濃縮した精子を培養液の中で受精させ、受精卵を子宮内に戻して着床させます。さらに、洗浄、濃縮した多くの精子を使う一般的な体外受精のほかに、精子減少症や高齢による卵子の透明帯の硬化の際に、1個の卵子に選別した1個の精子を注入させて受精させる「顕微授精」もあります

Chapter6

費用の目安

診察、一部の検査・治療には健康保険が適用されますが、検査、治療の多くは自費診療になります。
一般的に、不妊検査+タイミング療法1周期では、2万5,000~3万5,000円程度(男性の精子検査料8,400円を含む)が目安です。ちなみに、受精はすべて健康保険の適用外で、人工授精は1回につき1万~2万円、体外受精は1回につき30万~50万円、顕微授精は1回につき35万~55万円が目安となります。いずれも受精のみの費用です。
体外受精と顕微授精は厚生労働省の「特定不妊治療費助成制度」の対象となっていて、収入や年齢などの条件を満たしていれば、助成金が支給されます。市区町村によっては、独自の不妊治療助成金を設けている場合もあります。

検査費用の例

健康保険が適用される検査(保険適用後、税込み)

  • FSH(卵胞刺激ホルモン)検査 ……………………………………………… 
    360円
  • プロラクチンホルモン検査 …………………………………………………… 
    290円
  • エストロゲン(卵胞ホルモン)検査 ………………………………………… 
    570円
  • プロゲステロン(黄体ホルモン)検査 ……………………………………… 
    490円
  • 頸管粘液検査 …………………………………………………………………… 
    230円

健康保険が適用されない検査(自費、税別)

  • LH(黄体化ホルモン)検査 ………………………………………………… 
    2,000円
  • 甲状腺機能検査  ……………………………………………………………… 
    3,800円
  • 超音波検査  …………………………………………………………………… 
    1,000円
  • 子宮卵管造影  ………………………………………………………………… 
    7,600円
  • HRT 処方薬  ……………………………………… 
    1,000~2,000円前後/28日分
  • ピル 処方薬  ………………………………………………… 
    2,500円程度/28日分

Chapter7

ドクターからのアドバイス

妊娠を望むようになったとき、卵子や子宮について、妊娠のメカニズムについて、ほとんど知識がなかったり、勘違いをしたりしていることに気づく方が少なくありません。いざ妊娠したいと思っても、「タイミング」が間違っていては妊娠しません。ぜひ、ご夫婦で正しい知識を身につけてください。
現代社会では男女とも、不規則な生活や偏食、運動不足、ストレスが影響して、セックスレスになりがちです。健康的な生活を意識して、本来の妊娠力(セックス)を取り戻しましょう。最近は30歳、35歳という節目に乳がん検診や子宮がん検診を受ける方も多いと思います。妊娠のためだけでなく、女性が健康な一生を送るためにも、早いうちから「女性の検診」もプラスしていただきたいと思います。
不妊症の治療では、まずタイミング療法、次に排卵誘発法、そして人工授精、体外受精と進むことが多いですが、とくに女性の年齢が高いほど、どのような治療法を選択するかを医師と相談しながら進めていくことが大切です。不妊治療のゴールは妊娠です。最初は抵抗があるかもしれませんが、人工授精や体外受精も選択肢の一つと考えておきましょう。現在では、出生児の23人に1人は体外受精で生まれており、決して特殊な治療法ではありません。
そして欠かせないのが、男性の理解と協力です。妊娠も、不妊治療も夫婦ふたりのこと。まずはふたりとも検査を受け、治療について話し合い、お互いを気遣いながら治療にのぞんでください。以下に私から男性へのメッセージを記しておきます。

不妊症のご夫婦の男性へ

不妊の原因は「女性だけにある」とは限りません。不妊原因の40%は男性側にあります。「セックスができるから大丈夫」ということではなく、精子が少ない、精子運動能力が低いこともあります。ぜひ検査を受けて、精子や精巣に原因があることがわかったなら、治療に取り組んでください。
「無理しなくていいよ」の言葉が女性をねぎらうとは限りません。情報を共有し、ふたりで将来を考えましょう。

はらメディカルクリニック
院長 原 利夫 (はら としお)先生

医学博士。昭和58年 慶応義塾大学大学院にて(医学)博士学位を取得する。同大産婦人科助手を経て、昭和62年 東京歯科大学市川総合病院講師、平成元年 千葉衛生短大非常勤講師となる。この間、日本初の体外受精凍結受精卵ベビー誕生のスタッフとしても活躍。平成5年 不妊治療専門クリニックはらメディカルクリニックを開設。専門は生殖生理学、内分泌学、精子学。

URL http://www.haramedical.or.jp