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帯状疱疹 【監修:まりこの皮フ科院長 本田まりこ先生】

ここ数年、帯状疱疹(たいじょうほうしん)にかかる人が増えています。疲れがたまっているときに体や顔にピリピリと痛みを感じたら要注意。帯状疱疹は、子どものころにかかった水ぼうそうのウイルスが原因で、大半の人に発症の可能性があります。発疹が出てから3日以内に抗ウイルス薬を飲み始めれば、重症化や後遺症を防げます。疑わしい発疹が出たら、すぐに皮膚科を受診しましょう。

Chapter1

帯状疱疹ってどんな病気?

帯状疱疹は、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスが引き起こす病気です。多くの人が、子どものころにこのウイルスに感染し、水ぼうそうを発症しています。このウイルスは、水ぼうそうが治った後も神経節に潜伏していて、免疫力が低下すると再活性化します。活性化したウイルスは、神経線維、神経細胞を破壊しながら増殖し、痛みを引き起こします。皮膚の表面に到達すると、表皮細胞に感染して発疹を生じさせます。ウイルスは神経に沿って移動するため、発疹は帯状に現れます。
帯状疱疹は基本的に一生に1度しかかかりませんが、再発することもあります。
2014年10月に水痘ワクチンが公費で受けられる「定期接種(※)」に追加され、ワクチンを接種する子どもが増えるにつれ、水ぼうそうにかかる子どもは減少しています。以前は、水ぼうそうにかかった子どもと接することで、周りの大人は自身が持っているウイルスへの免疫力が維持されていました。ところがその機会が減ったことでウイルスへの免疫力が低下し、帯状疱疹にかかる人が増えているのです。

※定期接種:市区町村が実施し、公費で助成され、無料または低負担で受診できる予防接種

Chapter2

どんな症状が出るの?

帯状疱疹の症状は、痛みから始まります。ピリピリ、ビリビリした痛みが数日から1週間程度続きます。次に、虫刺されのような赤い発疹がポツポツと出ます。発疹はみずぶくれ(疱疹)になり、水ぶくれはやがて黄色い膿疱(のうほう)になり、これが破れるとかさぶたになります。20~30代の若い人はこのころには痛みが治まってきます。かさぶたが乾いて、はがれ落ちれば治癒となります。発疹が治癒しても50歳以上の人は、1か月半くらいは痛みが続くことが多いです。
痛みは皮膚の違和感やかゆみ程度のこともあれば、針で刺されたような強い痛みのこともあります。帯状疱疹は、感覚神経のある場所ならどこでも発症する可能性があり、ウイルスが再活性化した特定の領域だけに、基本的に体の左右のいずれか片方に症状が出ます。症状が多く現れるのは、胸神経が通る胸部、肋間(ろっかん)神経が通る腹部、三叉(さんさ)神経が通る顔です。

水ぶくれが広範囲に発生したり、重症化したりすると、皮膚の症状が治まってからも3か月以上痛みが続く後遺症「帯状疱疹後神経痛(PHN)」が残ることがあります。この場合、服が肌に触れただけでも鋭い痛みを感じたり、肌に風があたっただけでも痛みを感じたりします。
また、帯状疱疹の発症部位によっては、角膜炎やぶどう膜炎、腸閉塞(ちょうへいそく)、脳炎などの合併症を引き起こすこともあります。

Chapter3

どんな人がなりやすいの?

日本の成人の9割以上は水痘(すいとう)帯状疱疹ウイルスに感染していて、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるといわれています。発症のきっかけとなるのは、過労、寝不足、ストレスなどの免疫力の低下です。なかでも過労が発症原因と思われるものが多く、決算期や連休・夏休みの後、年末に患者数が増加します。また、抵抗力が低下する加齢も原因の一つで、発症率は50代から急激に高くなっています。
理由はわかりませんが、世界的に女性の患者が多いのも特徴です。排卵後から月経が始まるまでの黄体期と妊娠中は、免疫力が低下しやすいので注意が必要です。

Chapter4

診断の流れ

ピリピリとした痛みに続いて発疹が出たら、皮膚科を受診してください。過労やストレスなどの免疫力低下の要因がある、痛みや発疹が体の片側だけにあるようなら、迷わず、すぐに受診するのが重要です。
通常は問診と視診で診断を行います。水ぶくれの状態が、虫刺されや単純ヘルペス、接触性皮膚炎などと区別がつきにくいときは、水ぶくれの内容物をとり、顕微鏡で細胞を観察する検査や、ウイルス抗原検査を行う場合もあります。

診療の流れ

1.問診・視診 2.細胞検査またはウイルス抗原検査(必要な場合) 1.問診・視診 2.細胞検査またはウイルス抗原検査(必要な場合)

Chapter5

どんな治療方法があるの?

治療には抗ウイルス薬を使います。抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑えるもので、ウイルスそのものを死滅させるものではありません。十分な効果が得られるのは、発疹が出てから3日以内に服用したときで、重症化や、潰瘍になって跡が残るのを防ぐことができます。一般的には、抗ウイルス薬の服用開始から10日~14日間程度で治癒しますが、仕事を休むなどの十分な休養も肝心です。
症状によっては、鎮痛薬(疼(とう)痛)、ステロイド薬(炎症)、抗生物質(細菌感染)、抗うつ薬(神経痛)、抗てんかん薬(神経障害)なども処方されます。重症の場合は、入院して抗ウイルス薬の点滴を行います。
帯状疱疹後神経痛の治療では、痛みをコントロールするために抗うつ薬や抗てんかん薬、鎮痛薬などが処方されます。薬物療法では抑えられないほど痛みがひどい場合は、麻酔科やペインクリニックで「神経ブロック」を受けます。

Chapter6

費用の目安

  • 診察+抗ウイルス薬(7日分)………………
    3,500円~6,500円程度

※自己負担3割の場合。処方される抗ウイルス薬の種類や、ジェネリック医薬品を利用するかどうかで、薬代は異なります。

Chapter7

ドクターからのアドバイス

ピリピリと痛みを感じたときに、帯状疱疹だと予測できる人は少ないと思います。それでも、「最近忙しかった」「ストレスがかなりたまっている」など思い当たることがあれば、発疹が出る前でも病院で受診してください。発疹が出てから3日以内に抗ウイルス薬を服用するかどうかが、重症化と後遺症の予防、皮膚に跡を残さずに済むかの決め手になります。

欧米では、10年以上も前から帯状疱疹の予防を目的とした水痘ワクチンの接種が行われています。遅ればせながら日本でも、2014年10月に水痘ワクチンが定期接種となり、2016年3月には50歳以上への帯状疱疹予防目的の接種が承認されました。その後、新しいワクチンが承認され、2020年より接種が受けられるようになりました。現在、予防を目的としたワクチンは、水痘ワクチン(生ワクチン)と帯状疱疹ワクチン(不活化ワクチン)の2種類あります。効果や接種方法が異なりますので、接種を希望する方は医師に相談してください。

いずれも、予防目的のワクチン接種は保険適用外ですが、帯状疱疹にかかりにくくなり、発症した場合も症状が軽くてすみます。帯状疱疹は高齢者ほど重症化しやすいので、50歳を過ぎたらぜひ健康なうちに接種をしましょう。


まりこの皮フ科院長
本田まりこ先生

1973年東京女子医科大学医学部卒業後、東京慈恵会医科大学皮膚科助手を経て、同大学大学院研究科教授、同大学葛飾医療センター皮膚科教授、診療部長を兼任後、2014年、まりこの皮フ科(神奈川県横浜市鶴見区)開院。帯状疱疹などの皮膚のウイルス感染症のスペシャリスト。

URL http://marikono.byoinnavi.jp/pc/index.html

※掲載内容は、2018年10月時点の情報です。(2021年5月6日内容更新)