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女性が気をつけたい病気 女性に多い病気や症状について解説します

高濃度乳房 【監修:聖マリアンナ医科大学附属研究所 ブレスト&イメージング
先端医療センター附属クリニック院長 福田 護先生】

乳がん検診のマンモグラフィ(乳房X線撮影)検査において、「高濃度乳房」や「デンスブレスト」という言葉を耳にするようになりました。これは、乳腺組織の割合が高い乳房を指すもので、治療を必要とする病気やがん検査における「異常」ではありません。日本では、40歳以上の約4割が該当するといわれる高濃度乳房について、正しく理解していきましょう。

Chapter1

高濃度乳房って病気なの?

乳房は、皮膚、乳頭、乳輪、脂肪組織、乳腺組織、血管などから構成されます。その大半を占めているのが乳腺組織と脂肪組織で、乳腺組織の割合を「乳腺密度」といいます。マンモグラフィ検査では、X線が通過しにくい乳腺組織が白く、通過しやすい脂肪組織が黒く写るため、乳腺密度の高い乳房は全体が白っぽく写ります。
マンモグラフィ検査で撮影した画像は乳腺密度が少ない順に、@脂肪性、A乳腺散在、B不均一高濃度、C極めて高濃度の4段階のグループに分けることが決められています。このうち乳腺密度が高い方のB不均一高濃度とC極めて高濃度の2段階を「高濃度乳房(デンスブレスト)」と呼んでいます。

デンスブレスト

画像提供:聖マリアンナ医科大学附属研究所 ブレスト&イメージング 先端医療センター

高濃度乳房はあくまでもマンモグラフィにおける乳房の写り方をいう言葉で、病気ではありません。ですから、触診や乳房超音波検査では使用されません。マンモグラフィは3次元である乳房を2次元の画像に投影するため、乳腺組織の白い部分が多いと、同じく白く写るしこりなどが乳腺の白い部分に隠れて見つけにくくなる傾向があるとされています。また、乳がんは乳腺組織にできるため、乳腺組織が多いほどがんのリスクは相対的に高まるともいえます。
がんのリスクを高める要素は喫煙や飲酒など他にもありますし、マンモグラフィですべてのがんを発見できるわけではありません。ですから、高濃度乳房であることをネガティブにとらえる必要はありません。

Chapter2

どんな症状がでるの?

高濃度乳房を原因とする症状はありません。ただし、乳腺組織の割合が高いため、月経前にホルモンの影響で乳房が張る、痛むなど、乳腺症や月経前症候群の症状が出る人もいます。痛みの出る場所や強さは、人によってさまざまです。

Chapter3

どんな人がなりやすいの?

高濃度乳房は、その人の個性(体質)であり、女性なら誰でも高濃度乳房になる可能性があります。年齢や人種によっても差があり、一般的に、日本人の女性は欧米の女性に比べて脂肪組織の割合が低く、高濃度乳房の割合が高いことが知られています。
また、若い人ほど高濃度乳房の割合が高くなります。加齢とともに脂肪組織が増えるため、年齢が高くなるにつれて割合は減少します。日本では40歳以上の女性の4割が高濃度乳房に該当すると推測されています。
さらに、ホルモン補充療法や、妊娠や授乳、ダイエットによる脂肪量の大きな変化などによっても乳腺濃度は変化するため、ある時点から高濃度乳房になったり、高濃度乳房でなくなったりすることもあります。
高濃度乳房と遺伝の関係はわかっていません。しかし、体質は遺伝するので、親子で乳房の構成が類似することは考えられます。

年代別の乳房の構成

参照:厚生労働所デンスブレスト対応ワーキンググループ 対策型乳がん検診における「高濃度乳房」問題の対応に関する報告書(福井県・愛知県のデータより)を元に作成

Chapter4

判断と通知

高濃度乳房に該当するかどうかは、マンモグラフィ検査の画像を読影する技師や医師が視覚的に判断します。視覚的に、乳房の乳腺濃度別の4段階のグループのどこにあたるかを厳密に判断するのは難しく、とくにA乳腺散在とB不均一高濃度の境界には、判断者によるばらつきも見られます。
自治体の検診の場合、受診者に乳房の構成に関する情報を通知するかどうかは、自治体の判断に委ねられています。2017年に実施した調査では、受診者へ通知をしている自治体は全体の13.5%ほどで、通知をしない自治体が多数を占めています。通知内容は、高濃度乳房であることを知らせるだけのものもあれば、他の検査を推奨するものもありました。
人間ドックやクリニックでマンモグラフィ検査を受けた場合は、受診者が希望すれば、乳房の構成に関する情報を教えてもらえます。

Chapter5

どんな対応をするの?

高濃度乳房の人が受けなければならない検査や、しなければならない対応はありません。注意したいのは、「高濃度乳房だと、マンモグラフィ検査ではがんが見つからない」という誤解です。定期的なマンモグラフィ検査を継続したうえで、超音波検査(エコー)を追加したい場合や、乳がんの家族歴などがあってリスクが高いと考えられる人は、自己負担で超音波検査を受けるとよいでしょう。
遺伝子に変異がある(またはそれが強く疑われる)など、とくに乳がんのリスクが高い人は、3Dのマンモグラフィ(トモシンセシス)、超音波検査や乳房MRIを自己負担で受けるという選択を考えてください。

Chapter6

費用の目安

自治体のがん検診のマンモグラフィ検査は、無料あるいは少額の自己負担で受けられます。
人間ドックやクリニックで、とくに自覚症状がなく「検診」として受ける場合は、健康保険は適用されず、医療費は全額自費診療となります。検査内容や料金は施設によって異なります。

■自治体の検診
→40歳以上の女性は2年に1回受けられます。

  • マンモグラフィ検査+視触診 …………………………………………………… 無料〜2,000円前後

■人間ドックの検診
→基本的に全額自己負担ですが、健康保険組合などが医療費の一部あるいは全額を補助する場合もあります。

  • マンモグラフィ検査 ……………………………………………………………… 4,000〜6,000円前後
  • 超音波(エコー)検査 …………………………………………………………… 3,000〜5,000円前後

※マンモグラフィ検査と超音波検査がセットになっている場合もあります。

■乳腺科の検診
→検診は全額自己負担です。負担額は以下になります。異常を感じて受診する場合は、健康保険が適用されます。

  • 超音波(エコー)検査 …………………………………………………………… 3,000〜5,000円前後
  • マンモグラフィ検査 ……………………………………………………………… 4,000〜6,000円前後
  • 超音波(エコー)検査+マンモグラフィ検査+視触診+自己検診指導 …… 15,000〜20,000円前後

Chapter7

ドクターからのアドバイス

ピンクリボン運動の影響もあって、マンモグラフィの認知度や乳がん検診の受診率は高まりましたが、「高濃度乳房(デンスブレスト)」については、まだ知らない方が多いようです。
アメリカでは、ナンシー・カッペロさんが自身の乳がんをきっかけに、2008年にNPO法人「Are You dense?(R)」を設立し、高濃度乳房の該当者への情報提供と説明義務などを求めて運動を展開しました。そして現在、37州ほどが高濃度乳房の通知を義務付けていて、アメリカ全土で通知の義務化が始まろうとしています。
日本では現在、健康保険やがん検診の制度がアメリカと異なることもあり、高濃度乳房の通知は、一部の自治体でしか行われていません。私個人は、受診者に高濃度乳房に該当するかどうかを知る権利、知るかどうかを選択する権利があり、その機会は提供すべきだと考えています。
がん検診は早期発見というメリットもあれば、検査でがんを発見できずに「異常なし」と判定される“偽陰性”や、実際はがんはないのに「要精密検査」と判定される“偽陽性”が起こりうるというデメリットもあります。
高濃度乳房についてきちんと理解できていないと、不安を覚えたり過剰な検査を受けたりして、偽陰性や偽陽性に振り回されかねません。そうならないためにも、正しい知識を身に付けて、定期的な検診と自己触診(セルフチェック)を通じて継続的に自分の体に関心をもってほしいと思います。マンモグラフィは、過去画像との比較がとても重要です。検診は、信頼できる機関で継続的に受けるとことをおすすめします。

聖マリアンナ医科大学附属研究所
ブレスト&イメージング 先端医療センター附属クリニック院長 福田 護先生

1969年金沢大学医学部卒業。2009年3月より、聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング 先端医療センター附属クリニック院長を務める。日本における乳がんの権威として知られ、認定NPO法人乳房健康研究会の設立メンバーとして2000年からピンクリボン活動に携わっている。