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膀胱炎 【監修:きつかわクリニック 泌尿器科、四谷メディカルキューブ 女性泌尿器科 藤﨑 章子先生】

女性に多くみられる身近な病気の一つに「膀胱(ぼうこう)炎」があります。尿の出口から細菌が入り込み、膀胱で炎症を起こすものが中心ですが、近年では「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群」という、膀胱自体が萎縮し、知覚が過敏になってしまう病態も注目されています。つらい症状がある場合は、ためらわずに泌尿器科を受診しましょう。

Chapter1

膀胱炎ってどんな病気?

尿をためる役割を果たしている袋状の臓器「膀胱」の粘膜が炎症を起こす病気が「膀胱炎」です。女性の場合、図のように膀胱は子宮の前側に位置し、腎臓で作られた尿が尿道を通って膀胱にたまります。1回の排尿で200~400mlの尿をためられるとされていますが、個人差もあります。膀胱炎になると、尿はそれほどたまっていなくても頻尿になることもあります。

原始卵胞の数の経年変化

Chapter2

どんな原因で膀胱炎になるの?

膀胱炎で最も多いのは、便に混じって存在している腸内細菌などが肛門の周りで増殖し、尿道から膀胱に侵入することで起こる「急性膀胱炎」で、繰り返すこともあります。女性は男性よりも肛門から尿道までの距離が短く、菌が繁殖しやすい環境にあるため、膀胱に菌が侵入するリスクが高く、膀胱炎になりやすいといわれています。

膀胱炎はどの年代にも見られますが、特に20代の若い女性が性行為をきっかけに発症する場合や、閉経後は腟にいる常在菌のバランスが変わるため膀胱炎を繰り返しやすい傾向が見られます。まれに「尿道憩室」といって、尿の通り道にうみがたまる袋ができることがあり、そこから菌が繁殖して再発を繰り返すことがあります。この場合は憩室内のうみを注射針で吸い取ったり、憩室を取り除く手術を行ったりすることもあります。

また、近年定着してきた新しい概念である「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群」も知っておくとよいでしょう。菌による炎症ではなく、膀胱自体が膨らまず、また膀胱の知覚が過敏になることで起こります。尿検査などではっきりとした原因は突き止められなくても、尿がたまると痛い、トイレが近い、我慢できないなどの症状を訴える場合があり、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の可能性があります。

Chapter3

どんな症状がでるの?

典型的な症状には、頻尿(トイレが近い)、尿意切迫感(我慢できない尿意)、排尿困難(排尿の際、なかなか出てこないなど)、下腹部痛(排尿の際に恥骨周辺などが痛い)、血尿などがありますが、必ずしもこれらのすべてが見られるわけではありません。

頻尿でも、いつもより少しトイレが近いという人もいれば、夜も1時間おきに起きてトイレに行かなければならない人もいて、症状には個人差があります。血尿が続く場合は、がんなど、急性膀胱炎以外の病気でないことを確認する必要があるため、必ず泌尿器科を受診しましょう。

Chapter4

検査と診断

問診で膀胱炎の特徴的な症状が現れているかをヒアリングし、尿検査で炎症の所見を確認するのが一般的です。場合によっては、原因となっている菌を特定する「尿細菌培養検査」を行うこともあります。

繰り返している人や、なかなか治らない人などは、他の病気がないかを確かめるため、超音波検査、MRI(磁気共鳴画像装置)、残尿測定、内診などの検査や診察が必要になることもあります。また、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群を疑う場合は、患者さんに排尿日誌をつけてもらい詳しい排尿状況を観察したり、膀胱鏡(カメラ)で膀胱の状態を調べたりすることもあります。

膀胱炎は、腟炎など婦人科系の病気とはっきり鑑別できない場合も多いですが、排尿関連の症状を合併していれば泌尿器科から受診するのが診断の近道かもしれません。

診療の流れ

1.問診 2.超音波検査 3.血液検査 4.がん検診 5.診断 6.治療 1.問診 2.超音波検査 3.血液検査 4.がん検診 5.診断 6.治療

Chapter5

どんな治療方法があるの? 費用の目安は?

急性膀胱炎(単純性膀胱炎)の場合、一般的には炎症を起こす原因となっている菌を殺すための抗生剤を使用するとともに、水分を多く摂取し、たくさん排尿することで、膀胱で増殖した菌を尿と一緒に排出するように心がけます。症状や年齢など個人の背景に応じて、漢方薬や鎮痛剤などを併用することもあります。

ただし、すべてのケースで抗生剤が必要なわけではなく、処方は必要最低限にとどめます。尿検査で炎症があっても症状がない場合、あるいは症状があっても尿検査で炎症がない場合は、抗生剤を使わないこともあります。特に高齢者の場合は、慢性的にのう尿や細菌尿が出ることも珍しくないので、他に大きな病気がなく、特に生活に支障が生じるような症状がなければ、治療は必要ありません。

薬を処方されると安心感もあり、すぐによくなったと感じる人もいますが、医師の判断で処方された抗生剤は、自己判断で中止せず、指示された量を最後まで服用することが大切です。中途半端に菌が残ったままでは、再発したり、菌に耐性ができて次に発症したときには薬が効かなくなることもあるためです。

一般的な治療費

  • 診察・検査・処方 ……
    2000~2500円程度(自己負担3割の場合)
    + 処方された薬の種類による薬剤費

※行った検査内容によって変わります

Chapter6

繰り返さないための予防法は?

膀胱炎は、抵抗力が落ちたときに発症しやすいともいわれるため、疲れをためないように基本的な生活習慣を見直すことが大切です。日常生活で水分を十分に摂取することが予防になるという報告もありますが、自己判断で極端に大量の水分を毎日飲むと、トイレが近くなって逆に困るなど弊害もありますので、症状があるときに多めの水分摂取を心がければよいでしょう。膀胱炎を繰り返す場合は主治医の先生に確認しましょう。


また、排尿後はトイレットペーパーを動かさず、尿道口にあてて吸収させ、排便後は肛門から尿道の方へ菌をこすり付けてしまわないように、お尻の後ろから手を回して前から後ろに拭き取るようにしましょう。性行為をきっかけに発症することも多いので、性行為の後は必ず排尿するようにおすすめしています。

なお、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の場合は、ある種の食べ物が尿に排出される物質に影響を与えるという報告があります。かんきつ類など酸性が強いもの、香辛料、カフェインの多いもの、アルコールなどを摂取した後に痛みが強くなる人もいます。間質性膀胱炎・膀胱痛症候群が疑われる人は特定の食品を過剰に摂取していないか注意しましょう。

Chapter7

ドクターからのアドバイス

膀胱炎は、症状の程度によっては直ちに薬が必要なわけではありませんが、一度薬で治った人の約3分の1が半年以内に再発したという研究報告もあり、繰り返すことが少なくない病気です。半年のうちに2回以上、または1年のうちに3回以上膀胱炎を繰り返す場合、あるいは、つらい症状を我慢している人や血尿が出た人は、ためらわず泌尿器科を受診してください。どうしても泌尿器科にかかりにくい場合は内科や婦人科でもよいでしょう。


一般的な急性膀胱炎の場合、通常は問診と尿検査のみで、よほど必要な場合以外は初診で内診や膀胱鏡などの検査をすることは大変少ないので、気軽に泌尿器科でも相談してください。


また、妊娠中は子宮が大きくなることで膀胱が圧迫され、排尿状態も変化します。妊娠している人や抗がん剤などで免疫力低下状態の人は、排尿に関わる症状があれば、まずは主治医に相談しましょう。

きつかわクリニック 泌尿器科、四谷メディカルキューブ 女性泌尿器科
藤﨑 章子先生

福島県立医科大学卒業後、虎の門病院、聖路加国際病院などを経て、現在きつかわクリニック 泌尿器科、四谷メディカルキューブ 女性泌尿器科に勤務。日本泌尿器科学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本排尿機能学会専門医、日本性機能学会専門医、医学博士。

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