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ドライアイ 【監修:医療法人社団 浩仁医会 水天宮藤田眼科 御子柴 徹朗先生】

涙液層(るいえきそう)の安定性が失われ、さまざまな目の不快症状を引き起こす「ドライアイ」。特に女性はなりやすい傾向がありますが、環境の影響も大きいため、セルフケアでうまく付き合っていくことができる病気です。

Chapter1

ドライアイってどんな病気?

ドライアイは、涙の分泌量や質の低下などにより目の表面を潤す涙の安定性が失われ、さまざまな目の不快症状を引き起こす病気です。日本では2,000万人以上がドライアイといわれ、その数は年々増加傾向にあります。
涙液は、一番上に油分の層、その下に水分の層、一番下に涙を定着させる役割を担っているムチン層、という3層構造になっています。いずれかが不安定になるとドライアイの症状を引き起こします。

また、上まぶた、下まぶたにはそれぞれ、油分を分泌しているマイボーム腺という皮脂腺があります。このマイボーム腺が詰まって働きが悪くなる「マイボーム腺機能不全」(MGD:Meibomian Gland Dysfunction)によっても、涙が蒸発しやすくなり、ドライアイにつながるケースが多く見られます。ドライアイには、MGDによるもののほか、神経経路や涙腺の機能低下により涙の量が減少する「涙液減少型」と呼ばれるタイプ、ムチン層が不安定になる「BUT※短縮型」と呼ばれるタイプがあります。BUTの時間が短くなり、涙が分泌されていても目の表面で定着しないためにドライアイの症状が生じるものがBUT短縮型のドライアイです。実際には、さまざまな要因が複合的に関与してドライアイの症状が起こることが多いです。

※BUT(Break Up Time)とは、まばたきをしたときに涙の層が破壊されるまでの時間のこと。

Chapter2

どんな症状が出るの?

ドライアイの人は、目が乾く現象に対して、さまざまな不快症状を感じます。目がゴロゴロするような異物感、充血、かゆみ、疲れ目(眼精疲労)、まぶしさ、頭痛などのほか、「反射性流涙」という角膜保護のために涙を補おうと反射的に涙を流す機能が働き、かえって涙目や流涙が気になるケースもあります。それらの症状は放置しておくと角膜に障害を起こす場合があるので早めのケアが大切です。ちなみに涙目や流涙は、涙道が詰まるなど加齢による原因もあるので見極めが必要です。また、いわゆる「疲れ目」を判断する際、目を閉じると楽になる場合はドライアイ、目を閉じても目の奥に鈍痛がある場合は眼精疲労の可能性が高いでしょう。

Chapter3

ドライアイになる要因は?

ドライアイを悪化させるような環境要因として最も多いのは、コンピュータやタブレット端末などを用いた長時間のVDT(Visual Display Terminals)作業です。画面をじっと見続けるとまばたきの回数が減り、涙を補えないような状況になってしまうからです。また、空調などによる乾燥した環境もドライアイを助長します。外気が乾燥する秋・冬にはドライアイ症状を訴える人も増えます。
コンタクトレンズは、そのものがドライアイの原因にはなりませんが、涙が少ない人がコンタクトレンズを装用すると、目の表面にコンタクトレンズが貼り付き、涙の膜の安定性が保てなくなり、症状が悪化する傾向があります。特に含水率の高いソフトコンタクトレンズは、水分は保つものの表面は乾きやすく、目からも水分を吸い取ってしまうリスクがあります。ドライアイを悪化させずにコンタクトレンズを装用するためには、人工涙液などで涙を補うケアがすすめられます。
また、ストレスも悪化要因の一つです。涙は副交感神経が優位の状態で分泌されやすく、ストレスにさらされていると常に交感神経が優位になりがちで涙が出にくくなります。さらに、シェーグレン症候群(自己免疫疾患)やスティーヴンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)などの病気にドライアイの症状が現れることもあります。なお、女性にドライアイが多いのは、ホルモンバランスが影響していると考えられます。特に更年期に入った女性は、男性ホルモンも女性ホルモンも急激に減少し、全身が乾燥しやすくなります。また、目の内側に引いたアイラインやアイシャドーの粉末などのアイメークによる汚れがマイボーム腺を詰まらせる原因になっているともいわれています。

Chapter4

どんな治療方法があるの?
費用の目安は?

治療は、タイプや症状に応じて点眼薬を使い分けます。涙の量の不足に対しては人工涙液やヒアルロン酸ナトリウムが成分の点眼薬で涙を補います。ムチン層の問題で目がショボショボする症状には、ジクアホソルナトリウムが成分の点眼薬、白目(結膜)がゴロつく症状には、レバミピドという胃薬の成分から開発された点眼薬が用いられます。
涙が極端に少ない人には、涙の排出口に「涙点プラグ」を入れる治療を行うこともあります。状態に応じて上下またはどちらかのまぶたにある排出口をふさぎ、涙を目にとどまらせるものです。点眼薬や涙点プラグの治療は保険診療で、人により1〜3割の自己負担です。涙点プラグは1個当たり3,500円程度です。
マイボーム腺の機能が低下している場合は、油分の分泌を正常化するレーザー治療もあります。この治療を導入している医療機関はありますが、保険適応外の治療ですので費用は全額自己負担になります。

Chapter5

ドライアイの予防・セルフケアの方法は?

まずはドライアイの要因となる乾燥した環境を避けましょう。パソコン作業の際は画面の位置を目線より下に置くようすると、まぶたの開き方が小さくなります。意識的にまばたきをして、下までしっかり閉じるようにしましょう。花粉などの侵入防止カバーの付いた保護メガネなども、目の周辺の保湿環境を守るのに役立ちます。
また、マスクをしていると上側の隙間から息が風のように目に当たるため目が乾きやすくなります。マスクは隙間を空けず鼻の部分を密着させるように付けましょう。早い呼吸だとマスクから抜ける息のスピードが上がるため目が乾きがちですが、息をゆっくり吐くことで逆に息による加湿効果をもたせることができますので是非試してみてください。

マイボーム腺を詰まらせる目の際ギリギリまで塗り込むようなアイメークはできるだけ避け、メークはクレンジングでしっかり落としましょう。ときどき、ホットアイマスクや蒸しタオルなどで目を温めるのも効果的です。

ドライアイの人がコンタクトレンズを装用する場合は、1日おきなど限定して装用し、1日3〜6回程度、点眼薬で涙を補うようにしましょう。市販の点眼薬には防腐剤やメントール成分が入っているものがあり、かえって乾きを感じることもあります。市販薬であまり症状が改善しない場合は、しっかりと治療効果が期待できる処方薬をおすすめします。乾燥肌と同じように、ドライアイはケアも兼ねた継続的な治療が基本となることを理解しておくとよいでしょう。

Chapter6

ドクターからのアドバイス

ドライアイの対策は症状を治すケアが中心です。乾燥肌にクリームを毎日塗るのと同じように、よくなってもケアは続けて、うまく付き合っていきましょう。秋・冬の乾燥する季節だけ点眼薬を使うといった対応も賢い方法です。
加齢とともに涙の量も減りますので、基本的にドライアイはずっと付き合っていくものです。パソコン画面を見る時間が減った定年退職後は楽になったという人もいる一方で、タブレット学習が浸透し、小学生からドライアイを訴える場合もあります。VDT作業が日常となっている現代においてドライアイを含めた対策として、日々のケアや生活習慣は快適に過ごすうえで不可欠になっています。

医療法人社団 浩仁医会 水天宮藤田眼科
御子柴 徹朗先生

杏林大学医学部卒業。日本大学医学部附属板橋病院にて初期研修修了。慶應義塾大学医学部眼科学教室、東京医療センター眼科、鶴見大学歯学部附属病院眼科などを経て、現在水天宮藤田眼科に勤務。日本眼科学会認定眼科専門医。

※掲載内容は、2023年10月時点の情報です。