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大腸がん 【監修:日本橋レディースクリニック院長 馬場真木子先生】

大腸がんは、日本人が最も多くかかるがんであり、亡くなる人も多いがんです。けれど、早期に見つかれば治るがんです。大腸がんで命を落とさないためには、普段から便通の変化をチェックして大腸がんのサインを見逃さないこと、症状があれば必ず大腸内視鏡検査を受けることが大切です。

Chapter1

大腸がんってどんな病気?

大腸がんは、大腸(盲腸・結腸・直腸・肛門)の表面の粘膜に発生するがんです。S状結腸と直腸に多く発生し、日本人が最も多くかかるがんが、大腸がんです。一生のうち、女性の12人に1人、男性の10人に1人が大腸がんになると推計されています。10年前は女性が14人に1人、男性は11人に1人でしたから、大腸がんになるリスクは高まっているといえます。大腸がんで亡くなる人も多く、女性のがんでは死因の第1位ですが、大腸がんは早期に発見すれば治るがんです。それでも大腸がんで亡くなる人が多い理由として、自覚症状があってもすぐに検査をせず、発見のチャンスを逃してしまっていることなどが挙げられます。

出典元:2021年度消化器がん検診全国集計(日本消化器がん検診学会雑誌2025年63巻2号)

がん罹患数の順位(2020年)

  1位 2位 3位 4位 5位  
総数 大腸 乳房 前立腺 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸6位
男性 前立腺 大腸 肝臓 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸5位
女性 乳房 大腸 子宮 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸2位、直腸7位

がん死亡数の順位(2023年)

  1位 2位 3位 4位 5位  
男女計 大腸 膵臓 肝臓 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位
男性 大腸 膵臓 肝臓 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位
女性 大腸 膵臓 乳房 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸10位

出典元:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
出典元:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)

Chapter2

どんな症状が出るの?

大腸がんは、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。がんが存在する場所や大きさにより症状も異なります。血便が「痔のせいだ」と思い、痔の治療のため医療機関を受診したところ実は大腸がんだったということもあります。
また、検診等で貧血を指摘された場合は、消化器科(胃や大腸の内視鏡検査)や婦人科の検診を受けて貧血の原因となる病気がないか精査することも大切です。
細い便が続く、便秘と下痢を繰り返す、排便の回数が少量で頻回になったなど便通の変化も、大腸がんのサインと考えられます。例えば直腸に大きな腫瘍があると、便の通り道が狭くなり、その隙間を通るくらいの細い便しか出なくなります。
便の太さや排便回数は個人差があるので、いつもの便と比べて、もし細くなっていたら最近の食事を思い返しましょう。食事量が少ない、繊維質をあまり取っていないと便量は少なく、細くなります。

Chapter3

どんな人がなりやすいの?

大腸がんの発生は、正常な粘膜からできる経路と、良性のポリープ(腺腫)が大きくなる過程でがん化する経路があります。すべてのポリープががん化するわけではありませんが、出血の原因にもなるため、がんになる前の段階で内視鏡(大腸カメラ)で切除します。
血縁者に大腸がんになった人がいると、大腸がんになるリスクが高くなり、家族性(遺伝性)大腸がんは全大腸がんの5%程度といわれています。大腸がんの発生は、生活習慣と関わりがあるといわれているので、偏った生活習慣は大腸がんのリスクが高くなります。

便秘と大腸がんの関係に明確なエビデンス(科学的根拠)はありません。ただ、大腸がんがS状結腸と直腸に多く発生するのは、そこに便が溜まりやすく、有害物質(発がん物質)と接する時間が長いことが考えられます。
最近では腸内細菌が注目され、さまざまな病気との関係性が指摘されています。食物繊維を取って腸内環境を整えることで、大腸がんをはじめさまざまな病気の予防が期待できるでしょう。

Chapter4

がん検診と検査内容

大腸がん検診は早期発見に有効です。40歳以上の人は、毎年、便潜血検査(検便)を受けることが推奨されています。
検便で陽性となった場合は精密検査が必要になります。精密検査には注腸検査・大腸内視鏡検査・大腸CT検査がありますが、一般的に行われるのが大腸内視鏡検査です。
全大腸内視鏡検査は、前日に食事制限(消化のよいものを食べる)をして、検査当日は腸管洗浄剤(下剤)を1~2L飲んで大腸内の便をすべて排出してから行います。
内視鏡を肛門から挿入して大腸の一番奥の盲腸まで挿入し大腸全体を観察します。
ポリープやがんなど出血の原因となる大腸病変の有無を確認でき、もし異常があれば組織検査を行ったりポリープを認める際は切除します。
便潜血反応陽性の精密検査の受診率は本来100%であるべきですが、約55%(女性約61%、男性約51%)にとどまっています。「もともと痔があるから出血したのではないか」「前回は陽性だったが今回は陰性だから大丈夫」などと自己判断してはいけません。便や紙に血がついているからといって痔とは限らず、痔と大腸がんを併発している場合もあり、1回でも陽性と判定されたら大腸病変が潜んでいるかもしれません。
大腸内視鏡検査は「痛い・辛い」というイメージが根強く、検査を受けるハードルを高く感じる傾向にありますが、早期発見のチャンスを自ら手放さず、要精密検査の結果が出たら必ず精密検査を受けましょう。

内視鏡検査を受ける頻度については、検査をした医師に確認してみましょう。検査前の腸管洗浄剤で腸を洗浄して検査に臨んだはずでも実際検査すると、便が残っていることもあり十分観察できていないこともあります。またポリープを切除したあともまたできる可能性がありますので医師に次の検査予定を聞いてみましょう。
ポリープを切除している人は定期的な検査が望まれます。ただ、大腸内視鏡検査は出血や腸管穿孔などの偶発症(不利益な合併症)が生じることがありますので気軽に安易には受けられませんので、患者さんの年齢やその他のバックグラウンドも考慮した上で医師は検査時期を判断します。

Chapter5

どんな治療方法があるの?

大腸がんは早期に発見できれば、体に負担の少ない内視鏡で切除することができます。内視鏡による治療はがんが粘膜にとどまっている場合に行われ、ポリープの形状によって以下の切除方法が決まります。

内視鏡的ポリープ切除(ポリペクトミー)

隆起しているような病変に対する治療法。日帰り手術が可能。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

平らな病変に対する治療法。多くは日帰り手術が可能。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

EMRで切除が難しい大きな病変に対する治療法。

内視鏡治療でがんの切除が難しい場合は、外科手術になります。内視鏡の一種の腹腔鏡下手術は、開腹手術に比べて出血量が少ない、創傷が小さい、術後の痛みが軽く回復が早いという特長があります。また、より自由で精緻な操作が可能なロボット支援下手術もあります。
手術でがんを取り切るのが難しい場合は、薬物療法が行われます。
抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの薬を、単独または組み合わせて行います。また、薬物療法には手術後の再発予防の目的で行う補助化学療法があります。

Chapter6

費用の目安

  • 大腸がん検診(40歳以上)
    職場や自治体で受けると無料〜1,000円程度の自己負担

※保険適用、自己負担3割の場合

  • 大腸内視鏡検査(異常なし、観察のみ)
    6,000円程度(診察料、各種薬剤料などの費用含む)
  • 大腸内視鏡検査+生検(1臓器の場合)
    10,000円程度(診察料、各種薬剤料などの費用含む)

※保険上、「盲腸」「上行結腸・横行結腸・下行結腸」「S状結腸」「直腸」は別臓器と規定されるため多臓器になる場合は値段が異なります

  • 大腸内視鏡ポリープ切除(1か所の場合)
    20,000円程度

※保険上、「盲腸」「上行結腸・横行結腸・下行結腸」「S状結腸」「直腸」は別臓器と規定されるため多臓器になる場合は値段が異なります

Chapter7

ドクターからのアドバイス

50歳未満で発症する若年性大腸がんが増えています。若年者でも血便、貧血、腹痛、下痢、便通異常などの自覚症状を認めた際は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
また自覚症状が無くても検便検査で陽性を指摘された場合は必ず精密検査を受けましょう。
大腸がんは早期に発見できれば治るがんです。
普段から便通に変化がないか確認をして、大腸がんのサインを見逃さないようにしましょう。

日本橋レディースクリニック院長
馬場真木子先生

杏林大学医学部卒業。同大学病院第一外科に入局し、消化器外科を専門とする。その後、松島病院大腸肛門病センター、松島ランドマーククリニック院長を経て、2008年4月、女性専門の肛門科胃腸内科として「日本橋レディースクリニック」を開設。医学博士、日本大腸肛門病学会専門医・指導医、日本外科学会専門医、臨床肛門病技能指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器外科学会認定医、日本医師会認定産業医。

※掲載内容は、2025年4月時点の情報です。