糖尿病 【監修:MEDU株式会社/ウチカラクリニック代表 森 勇磨先生】
厚生労働省「患者調査」(令和5年)によると、現在、糖尿病で治療を受けている人は約552万3000人。予備軍を含めると1000万人を超えると推計される国民病です。遺伝や生活習慣の乱れが糖尿病のリスクに影響します。適切な食事と運動を習慣にして肥満を防ぎ、血糖値をコントロールしましょう。
糖尿病ってどんな病気?
「尿に糖が出る」という名前の糖尿病ですが、その本質は、血液中の糖分が増えて全身に悪影響を及ぼすことです。進行すれば血管がボロボロになり脳卒中や心筋梗塞などが起こりやすくなったり、末梢(まっしょう)の細い血管や神経が傷つき、さまざまな合併症が引き起こされたりします。
糖尿病の3大合併症
し=神経 神経が傷つき足の裏の感覚がなくなる、あるいは足の壊疽(えそ)で切断を余儀なくされることもある
め=目 「糖尿病網膜症」で失明することもある
じ=腎臓 人工透析が必要になる原因の第1位は糖尿病
どんな症状が出るの?
自覚症状が乏しいのに、気づかないうちに体の中でじわじわとリスクが進行するのが糖尿病の怖いところです。進行すれば喉が渇く、目がかすむ、足がしびれる、糖分をエネルギーにできないため脂肪や筋肉が分解されて体重が減る、といった症状が出ることもありますが、これらを自覚するようになった段階ではかなり危険な状態かもしれません。
どんな人がなりやすいの?
糖尿病のなりやすさは「インスリンの分泌量」「インスリンの効きやすさ」の両面から考えられます。食事をすると血液中の糖分が増え、血糖値が上がりますが、通常、膵(すい)臓からインスリンという血糖値を下げるホルモンが分泌されることによって下がります。このインスリンが足りない、または分泌されても効きにくい状態になると血糖値が高いままになってしまうのです。
これには、遺伝的な体質も影響します。例えば、免疫機能の暴走により膵臓の細胞が壊されてしまう1型糖尿病の人は、先天的にインスリンがほとんど分泌されません。

糖尿病の9割以上を占める2型糖尿病でも、インスリンの分泌能力や効きやすさには個人差があり、体質と生活習慣の両方が関係します。そもそも、日本人は欧米人と比べてインスリンの分泌能力は低いといわれています。もともと糖尿病になりやすい体質だからこそ、リスクを高めてしまう行動を知り、対策をする必要があるのです。
肥満、喫煙、飲酒、睡眠不足など生活習慣の乱れは、インスリンの効きやすさに影響します。中でもインスリンが効きにくくなる最大の要因は、「体に脂肪が蓄積すること」。脂肪細胞からはインスリンの作用を阻害する「悪玉アディポカイン」という物質が放出されているため、脂肪がたまればたまるほど、インスリンが効きにくくなります。見た目にはやせて見えても、運動不足で臓器や筋肉に脂肪がたまって血糖値が下がりにくくなる場合もあり、要注意です。
インスリンが効きにくくなれば、膵臓はより多くインスリンを出さなければ血糖値を下げられません。食べ過ぎや運動不足などが続いていると膵臓は酷使され、加齢による機能低下も加わって、やがてインスリンを分泌できなくなってしまいます。
統計上、糖尿病の患者数は男性の方が多いですが、女性は閉経前後に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下すると、それまで血管や全身の健康を守っていた作用が得られなくなり、インスリンが効きにくくなってきます。脂肪も蓄積しやすくなるため、男性と同じように糖尿病になりやすくなります。
検査と診断
健康診断や人間ドックの血液検査で、空腹時血糖値 126mg/dl以上またはHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)(1〜2カ月の血糖値の平均) 6.5%以上で「糖尿病」と診断されます。空腹時血糖値 100〜125mg/dl、HbA1c 5.6〜6.4%の人は、一歩手前の糖尿病予備軍です。「異常なし」はHbA1cで言えば5.5%未満ですが、遺伝的な要因も関係するので、この値にこだわる必要はありません。重要なのは、毎年健診をしっかり受けて血糖値の動きをチェックすること、検査結果を放置せず日々の行動に生かしていくことです。
どんな予防・対策があるの?

脂肪を減らし、筋肉量を増やして血糖値をコントロールしましょう。そのためには、野菜を中心にバランスの良い食生活を心がけ、食事量が多い人は例えば「ご飯2杯を1杯にする」「白米を玄米に置き換える」など、できそうなことから摂取エネルギーを減らす工夫を始めましょう。
また、ウォーキングなどの有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせた運動習慣も欠かせません。食事で摂った糖分の約7割は筋肉に運ばれます。筋肉は糖分を取り込み、エネルギーとして燃やす役割をはたしており、筋肉が少ないと余分な糖をエネルギーに変えることができず、血糖値が上がってしまいます。
放っておくと加齢とともに筋肉は落ちてしまいますので、将来、寝たきりにならないためにも若いときから運動習慣を身につけ、筋肉を維持することが重要です。「食事の後にスクワットを5回」「1日3分、家の周りを1周歩く」など無理なくできることから、少しでも実践しましょう。
そのほか、喫煙や過度な飲酒は控え、質の高い睡眠を十分にとることも大切です。睡眠不足だとレプチン、グレリンなど食欲に関係するホルモンが乱れ、太りやすくなります。また、ストレスが多いと血糖値が上がりやすく、食事に反動が出てしまうことも。ストレスコントロールも心がけましょう。
どんな治療方法があるの?
1型糖尿病のようにインスリンの分泌量が極端に少ない人はインスリンを打つ注射が必要になります。主に2型糖尿病で使われる治療薬には、経口薬(飲み薬)と注射薬があり、重症度や合併症の有無などによって組み合わせて使われます。
肝臓で糖が作られるのを抑制する薬、膵臓に働きかけインスリンの分泌を増やす薬、ホルモンの作用をブロックして血糖値を上がりにくくする薬、余分な糖を尿に排出しやすくする薬など、さまざまな特徴の薬があります。
従来、薬によっては大きく血糖値が下がりすぎて低血糖を起こすことがありましたが、最近は副作用の少ない新しい薬の開発が進み、そうしたリスクも少なくなっているようです。まれに「インスリノーマ」(インスリンを分泌する腫瘍)によって低血糖になる場合や、断食を続けるような極端な食事制限で低血糖になることが考えられますが、万が一、低血糖によるふらつき、集中力低下を感じたらブドウ糖や甘いジュースなどで糖分を補給してください。

ドクターからのアドバイス
体重だけでなくBMI(※)も意識しましょう。BMI 30以上など高度な肥満の人は血糖値も上がり糖尿病のリスクも高い場合が多いです。たとえ糖尿病で薬を使うことになっても、食事や運動など生活習慣の改善によって薬を減らしたり、中止したりすることができる場合もあり、毎日の行動の積み重ねが重要であることに変わりはありません。定期的なチェックを欠かさず、適切な習慣を無理なく長続きさせることをめざしましょう。アプリなどで体重や血糖値の変動を「見える化」するのも習慣化するきっかけになるかもしれません。
※BMI(Body Mass Index):体格指数=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
MEDU株式会社/ウチカラクリニック代表
森 勇磨先生
内科医、産業医、労働衛生コンサルタント。藤田医科大学病院の救命救急病棟での勤務後、2020年2月よりYouTubeにて「予防医学ch」をスタート。登録者数は70 万人を超える(2024年3月時点)。産業医として、予防医学の実践を経験後、独立し現職。法人向けの福利厚生としてのオンライン診療サービスの展開、健康経営のコンサルティングなどを通じて予防医学のさらなる普及をめざしている。著書に『40歳からの予防医学』(ダイヤモンド社)、『怖いけど面白い予防医学』(世界文化社)、『認知症は予防が9割』(マガジンハウス新書)など多数。
※ウチカラクリニック:https://uchikara-clinic.com/






