身近な病気・症状の解説 女性に多い病気や症状について解説します 身近な病気・症状の解説 女性に多い病気や症状について解説します

咳喘息 【監修:みやざきRCクリニック院長 宮崎雅樹先生】

風邪は治ったのに咳だけが長く残っている人や、激しい咳が止まらないという状態を繰り返している人は「咳喘息(せきぜんそく)」の症状が出ている可能性があります。咳喘息は気管支が炎症を起こした状態で、外部からの刺激に対して敏感に反応することで咳が出る病気です。放置すると気管支喘息に移行するほか、慢性的な咳にはさまざまな病気が隠れている可能性も高く、早期に受診し、正しく診断してもらうことが肝要です。

Chapter1

咳喘息ってどんな病気?

風邪ではないのに、咳だけが長く残っている、もしくは止まらないという状態が繰り返している場合、咳喘息と診断されます。2013年のデータでは、3週間以上続く咳のうち約7割は喘息が原因となっています。
そのほかに慢性的な咳が続く原因は、喫煙の影響による慢性閉塞性肺疾患(COPD)や慢性副鼻腔炎、慢性気管支炎、間質性肺炎、胃食道逆流症などが挙げられます。

Chapter2

喘息と咳喘息のちがいは?

喘息と診断するための大きなポイントは2つあります。1つは、気管支にアレルギー性の炎症が慢性的に起きていて、外部からの刺激に対して敏感になっている状態です。次に、気道が狭くなっている状態(気道狭窄)で、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった喘鳴(ぜんめい)が起こるのはこのためです。
気管支に炎症が起きていて気道が狭くなっているため、少しの刺激にも反応して、咳が止まらなくなったり息苦しくなったりします。
一般的に喘息と呼ばれているのは喘鳴を伴う慢性的な「気管支喘息」で、喘鳴を伴わず咳だけが続くのが「咳喘息」とされますが、両者のちがいは必ずしも明確ではありません。咳喘息から気管支喘息に移行する例も多く、咳喘息は喘息の前段階、軽症の喘息ととらえることができます。
咳喘息を含む喘息患者は国内に推定1000万人以上といわれています。そのうち治療を受けている人は185万人で、約8割は診断を受けておらず、喘息と気づかないまま過ごしている方も少なくないと推定されます。

そのせき、ぜんそくかもしれません 画像を拡大する(新規ウィンドウを表示)

出典:「そのせき、ぜんそくかもしれません」

Chapter3

喘息症状による日常生活への影響は?

電車やバスなどの公共交通機関に乗った途端に咳が出て困ったり、会議中や接客中に咳が出たらどうしようかと心配したりするなど、咳が出て止まらなくなることによる影響が大きいです。咳が出てほしくない場面に限って止まらなくなると日常生活にも支障をきたします。
喘息症状の引き金はさまざまで、温度や湿度の変化が刺激になるケースもありますし、長時間しゃべったり、歌を歌ったりすることで症状が出る方もいます。
夜間は副交感神経が優位になることで気道が狭くなり、激しい咳や息苦しさなどの発作を起こしやすいのも特徴です。タバコや線香の煙、香水、花粉に反応する場合もありますし、梅雨の時期や冬など特定の季節に症状が悪化する方もいます。

Chapter4

喘息の原因は?

小児と成人では原因が異なります。小児の場合はアレルギーが原因の「アトピー型喘息」の割合が高くなります。
これに対して、成人の場合、発症メカニズムは完全には解明されていませんが、風邪などで気管支の感染を繰り返すうちに、だんだんと気管支がダメージを受けて、刺激に対して敏感な状態が固定化していくことが考えられます。新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに感染した後、咳が止まらなくなったという方も多く見られます。
激しい運動が原因となる「運動誘発喘息」の方もいます。運動によって呼吸の回数が増加し、冷たい空気を取り込むことで気管支が刺激を受けて過敏性が固定化されていくと考えられます。実際、トップアスリートになると喘息を抱えている割合は高くなります。

Chapter5

診断と治療方法は?

症状から診断する「診断的治療」を行います。喘息による咳が疑われる場合、喘息の治療薬である気管支拡張薬や吸入ステロイド薬を処方し、効果が見られるかどうかで診断していく手法です。処方薬に対して反応が見られない場合は、喘息以外のほかの原因を探っていきます。
治療には、気管支拡張薬や吸入ステロイド薬を用います。吸入薬を主体とした治療ではコントロールが難しい重症患者に対しては、アレルギーの原因物質を標的にして炎症を抑制する生物学的製剤という新たな治療薬も近年登場しています。

Chapter6

どんな予防法があるの?

気管支に炎症を起こさないためにもなるべく風邪をひかないようにしましょう。コロナ禍で感染対策を身につけている方も多いので、風邪がはやっている時期はマスクをしたり、帰宅時の手洗い、うがいを習慣づけたりするなど、日頃から基本的な対策をするようにしましょう。
喫煙は慢性気管支炎の原因にもなるので、受動喫煙も含めて避けるようにしましょう。
女性の場合、月経周期や妊娠などホルモンバランスが咳に与える影響も指摘されています。また、女性に限らず、肥満と喘息には関連があります。脂肪細胞が炎症誘発物質を放出することで喘息症状を悪化させるという研究結果も出ています。適正な体重を心がけましょう。

Chapter7

ドクターからのアドバイス

「風邪をひいたら咳が出るのはしかたない」と考えている方も多いですが、風邪のたびに咳が長引くのは当たり前の状態ではありません。
治療しないで放置していると、たとえ一時的に症状が治まったとしても、気管支に少なからずダメージを残し、気道狭窄へとつながる恐れがあります。咳喘息から気管支喘息へと移行する可能性も高くなります。
長引く咳に悩んでいる方だけでなく、風邪をひくたびに2〜3週間咳が止まらないということを繰り返している方も、一度、呼吸器専門医のいるクリニックや呼吸器専門外来を受診してみることをお勧めします。近くに専門医がいない場合、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。
喘息は推定患者数も多く、決して特殊な病気ではありません。吸入薬によって発作をコントロールしながら上手に付き合っていくことで、QOL(生活の質)の向上が期待できます。

みやざきRCクリニック院長
宮崎雅樹先生

2006年群馬大学医学部卒業。慶応義塾大学病院、東京都済生会中央病院などを経て、2016年に、みやざきRCクリニックを開業。医学博士、日本呼吸器学会呼吸器専門医。著書に『そのせき、ぜんそくかもしれません』(自由国民社)、『長生きしたけりゃ肺を鍛えなさい』(エクスナレッジ)など。

https://kita-shinagawa.clinic/doctor.html