Chapter4

どんな治療を受けるの?

下肢静脈瘤には薬物療法がありません。治療は基本的には手術で、症状のある血管を除去します。心臓へ戻る血液のほとんどは深部静脈を流れているため、もともと機能していない表在静脈の血管を除去しても、全身の血流への影響などは心配ありません。最近はレーザーで血管の中を焼灼(しょうしゃく)する日帰り手術が主流ですが、血管の状態によってはできないこともあります。その場合は、弁が機能しなくなった血管を引き抜くストリッピング手術が行われます。手術した場合、同じ箇所で再発することはほとんどありませんが、片方の脚を手術して数年後に反対側の脚を手術するという例は少なくありません。手術以外には注射で血管を固める硬化治療があります。

レーザー治療

静脈にレーザーファイバーを挿入して血管の中を焼灼し、血管を閉じてしまう方法です。痛みが少ないことが特長の一つで、閉じた血管は体内で徐々に周囲の組織と同化し、やがて跡もほとんどわからなくなります。一般的には局所麻酔で行われ、日帰り手術が可能な医療機関もあります。
手術に使われるレーザーには、波長が何タイプかありますが、現在、健康保険が適用されているのは波長980ナノメートル(ナノは、10億分の1)のみ。術後の痛みがよりマイルドな1470ナノメートルや2000ナノメートルの波長での治療は健康保険適用外になります。治療を受ける前に、医師によく説明してもらいましょう。また、膝の裏などでくもの巣のように広がった血管には、体の外からレーザーを照射することもあります。手術後は3週間程度、医療用の弾力性のあるストッキングを着用して圧迫治療を行います。

ストリッピング手術

レーザー治療が普及する前、最も一般的に行われていた手術で、脚のつけ根と足首の2か所を切開して、不要な血管を抜き出す方法です。全身麻酔または下半身麻酔で行われ、術後は激しい痛みが残ることがあります。合併症や後遺症が出ることも多く、1~2週間の入院が必要です。

硬化療法

静脈瘤を起こしている血管に薬を注射して血管を固めてしまう方法です。傷は残らないのですが、大きな静脈瘤にはあまり効果がありません。注射は通常数回行いますが、注射をした部分に痛みや色素沈着が出ることがあります。

Chapter5

費用の目安

レーザー治療

980ナノメートル(健康保険適用3割負担の場合)

  • 片足:5万3000~7万円
  • 両足:9万7000~11万3000円

※治療後に硬化療法が追加されることがあります。

2000ナノメートル(健康保険適用外)

  • 片足:25万円
  • 両足:45万円

ストリッピング手術(保険適用3割負担の場合)

  • 片足:5万~12万円
  • 両足:10万~15万円

※別途入院費がかかります。

硬化治療(保険適用3割負担の場合)

  • 片足:5000~6000円
  • 両足:1万~1万1000円

※医療用弾性ストッキングの価格の目安は、1足5000~1万2000円程度。

すべての治療には、初診料、検査費用などでおよそ5000~1万円がかかります。また、施術後は施術内容により頻度は異なりますが、1週間後、1か月後、3か月後、6か月後など数回の通院が必要です。

Chapter6

ドクターからのアドバイス

女性は美容的な意識から血管の変化に気づきやすく、早期発見・治療で治療法の選択肢も広がります。早期に適切な治療が施されると、治療回数が少なくて済み、回復も早まります。もし、血管がボコボコしている、脚の皮膚の表面に湿疹や潰瘍などの症状が出ているようなら、できるだけ早く血管外科の専門医の診断を受け、治療を始めましょう。

阿保義久先生

北青山Dクリニック院長/東京大学医学部腫瘍外科・血管外科 非常勤講師
東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院第1外科、虎ノ門病院麻酔科、三楽病院外科、東京大学医学部腫瘍外科・血管外科を経て、2000年、パーソナル総合医療クリニックをめざす北青山Dクリニック(http://www.dsurgery.com/)を開設。