Chapter5

どんな治療方法があるの?

卵巣の腫瘍が悪性の可能性が高い場合は基本的に手術で腫瘍を取り、良性か悪性かの診断とがんの進行期の診断をします。
卵巣がんでは、腫瘍を最大限切除することが、その後の経過に大きく影響します。そのため、一般的には開腹手術を行い、両側の卵巣と卵管、子宮、大網(たいもう、胃の下側に垂れ下がる膜)を摘出します。また、リンパ節へ転移している場合は、リンパ節も取り除きます。
妊娠を希望する場合は、腫瘍のタイプや進行度などに応じて、腫瘍がない側の卵巣と卵管、子宮を残す「妊孕(にんよう)性温存手術」が検討されます。

手術後は、抗がん剤による化学療法を行うのが一般的です。2013年には、卵巣がんの治療薬としては初の分子標的治療薬「アバスチン®」が承認されました。分子標的治療薬はがん細胞を狙い撃ちする薬で、化学療法との併用が増えつつあります。

海外では、低用量ピルを服用して排卵を一定期間止めたり、HBOCの人の卵巣を予防的に切除したりするといった卵巣がんの発症リスクを低減させる治療も行われています。日本では、いずれも卵巣がんの予防としては確立されていません。また、ピルの処方、遺伝子検査、予防的切除には健康保険は適用されません。

Chapter6

費用の目安

  • 超音波検査+血液検査………………
    4,000円~5,000円程度 
    ※自己負担3割の場合

※手術と化学療法は内容により費用が異なります。高額になる場合は、高額療養費制度により、一定の限度額を超えた分が払い戻されます。

Chapter7

ドクターからのアドバイス

現代の女性の卵巣には大きな負担がかかっているといえます。なぜなら、以前に比べ、初潮年齢が早まり、出産回数が減って、休みなく排卵を繰り返しているからです。戦前、一人の女性が4、5回出産していたころと比べると、生涯の月経回数は概算で約50回から400回以上に増えていることになります。

卵巣がんは、ワクチンでは予防できず、初期ではほとんど自覚症状がない病気です。だからこそ、年に一度は卵巣の状態を検査することが大切です。市区町村が行っている子宮頸がん検診で異常がなかったので、卵巣も問題がないと考えてしまう女性が少なくありません。検診の際や別の機会に婦人科を受診して超音波検査で卵巣もチェックしてもらいましょう。


がんの発症には、食事やストレス、喫煙、過度な飲酒も関係しているといわれます。また、生活が便利になったおかげで、普通に暮らしているだけで運動不足や冷え性になりやすく、免疫力が低下しがちです。卵巣がんに限りませんが、適度に食事に気をつける、シャワーですませずにバスタイムは湯船でしっかり体を温めるなど、がんになりにくい体づくりを心がけていきましょう。

成城松村クリニック院長 日本産科婦人科学会専門医
松村圭子先生

1995年広島大学医学部卒業後、同学部産婦人科学教室入局。2010年、成城松村クリニックを開設し、院長に就任。「身近で気兼ねなく相談できる、生涯のかかりつけクリニック」を掲げ、活躍中。