Chapter5

治療と仕事の両立
―上司に相談。会社に治療するための制度があるか確認―

司会

入院や治療時に、会社での仕事はどう対応されたのでしょうか。

Dさん

乳がんが分かった当時は、仕事と治療を両立するための制度はなく、治療に専念するための制度(休職)しかありませんでした。手術のための入院時は年休を取りましたが、その後は、子どもが小学生だったので、育児のため制度を活用し、手術後2週間は在宅勤務にして、出社日は短時間勤務で通勤ラッシュを避けることができたので助かりましたね。
週に1回の抗がん剤治療は木曜日にし、年休を使いました。翌日は様子を見て在宅勤務にして、抗がん剤の副作用である発熱や吐き気は土日にあたるようにして、月曜日から会社に出社するというルーティンを組んでいました。

Bさん

お子さんが小学校を卒業してからはどうされましたか?

Dさん

その頃には抗がん剤治療が3週間に1回になったことと、副作用が少なくなったことで、治療日だけ年休を取りました。放射線治療は週5回の通院が1ヵ月ほど続きましたが、半日年休や時間単位の休みを使って会社帰りに治療していました。最後のホルモン治療は、3ヵ月に1回の通院なので年休を使っています。

Cさん

私は、3回あった手術の入院時には年休やリフレッシュ休暇を利用し、抗がん剤治療中は本当に具合が悪くなる日に休ませてもらっていました。「ここはごめんなさい」と言えるようないい関係を築けているのもあって、仕事と治療がしやすく恵まれていると感じます。今はホルモン療法に入っているため、一見すると何も不調がないように見えるので、いい意味でも悪い意味でもたぶん気にされていません。皆さん、腹痛や頭痛がある際に周囲にわざわざ体調不良を伝えない経験があると思います。そのような付き合い方と似通ってくる部分があるのかなとも感じます。

Aさん

私はもともと営業部門にいて、大量の荷物を抱えながら外出することが多かったんです。治療中は体力的に難しいこともあり、内勤中心の部門に異動させてもらいました。放射線治療の期間は毎日就業中2時間ほど中抜けで通院するローテーションになっていたので、仕事の一環として治療しているような感覚でした。

Bさん

私は当時の勤務場所が片道2時間ほどかかる場所にあり、仕事をしながら治療をするのは体力的にも自信がなかったので、放射線治療の一定期間は休みをとらせてもらいました。休みの間に、病気のことを勉強したり、今後の自分のことを考える時間がとれてよかったと思っています。ホルモン療法に入ってからは3ヵ月に1回、午前中だけ休みをいただいて病院に通っています。

司会

治療を続けながら仕事をしていくうえでのポイントはありますか?

Cさん

体力だけでなく気力も含めて仕事ができる状態であること、家族や職場の理解があること、自分の役割に無理がないかという3つが密接に絡み合っていると思います。それこそ、荷物を持って動き回ることがメインの仕事や、朝から終電まで仕事をするのはちょっと無理がありますよね。ただ、乳がんの治療法はいろいろありますし、人それぞれに環境や状況が違うということが大前提です。

Aさん

あとは会社制度ですよね。どういう会社制度があるのかあらかじめ知っておくことも大切です。また知らなくても頼れる人が身近にいると、いざというとき安心ではないでしょうか。

Dさん

抗がん剤治療中に副作用で爪が剥がれてしまうことがたびたびあったんです。靴が履けず出社できない。そのときには、けがをした人が使える在宅勤務制度を一時的に使わせてもらいました。できること、できないことを具体的に伝えたことで、今ある制度を応用したり、組み合わせて使うために、勤労部の方や上司、保健師の方、産業医の方が話し合って提案してくださって、本当にありがたいと思っています。

司会

皆さん共通して、会社にはすぐに報告されたのですね。
仕事をしながら治療を受ける、一時的に休職するなど選択肢はさまざまですね。