Chapter6

読者に伝えたいこと
―同じ体験をした人と話して不安を軽くすることはできる―

司会

今回、皆さん共通して、「がんと仕事の両立」で、不安を抱える人たちに伝えたいと座談会に参加してくださいました。乳がんを経験されてご自身が感じたことをお聞かせください。

Bさん

今ではこうして仕事と治療を両立できていますが、がんを告知された当初は、いろんなことに悩み、悶々と考えこんでいました。ただ、がんを体験していない人にはなかなか話せず、自分の中で抱えてしまうんですよね。同じような体験をした人と話ができるだけですごく救われることを、身をもって感じています。もし話す相手がいなくても、私たちがこうして伝えることで、少しでも誰かの不安を軽くするきっかけになれたらうれしいですね。

Aさん

早期発見の大切さは伝えていきたいですね。こうして皆さんと明るく話せているのも早く見つけられたからこそですし。数年前からがんセミナーで自分の体験を話してきましたが、思いを感じ取ってくださったBさん、Cさん、Dさんとつながることができました。治療中は、どうしても1人でがんと向き合っているような気持ちになりますが、そんなことはなくて、同じような人がいる。「1人じゃない」ということもお伝えしたいですね。

Bさん

あとは保険の大切さです。私自身が保険に入っていなくて大変な思いをしたので。

Cさん

私の体験としては、インターネットの情報に左右されないことも大事だと思います。不安になるとまずインターネットで調べてしまいますが、「苦しみなく治療できる」というエビデンスのないものや、「こうしないとダメ」と不安をあおるようなものなど、さまざまな情報が氾濫しているんですよね。不安な状態だと正しい情報にたどりつけなかったり、自分自身でフィルターをかけていて正しいことや重要なことが見えないということもあると思います。

Dさん

私自身は、がんになったことが特別な経験だとは思っていません。がんよりつらい病気もありますし、育児や介護をしている人の方が苦労されているかもしれないし、仕事をサポートしている同僚の方がもっとつらいかもしれない……。それぞれに抱えているものがある中で、私を支えてくれた人たちがいると思うと感謝の気持ちを忘れちゃいけないなと思います。

Cさん

そうですね。自分が今、仕事をしながら日常を過ごせているのは周りの方の支えがあるからだとすごく感じます。がんや病気だけでなく、誰でも不安になる場面はありますし。

Dさん

何がつらいかも人によって違いますよね。痛みや恐怖、経済的なこと、乳がんなら胸の形が変わることかもしれない。本当に人それぞれだと思うんです。でも、わかってくれる人と話すことでびっくりするほど自分が強くなれる。不安や心配な気持ちを持っている人がいたら、少し勇気を出して信頼できる人に話してみるといいかもしれません。話すことで誰かとつながれる、そういうことが大事なんじゃないかと思います。

座談会終了後、メンバーのかたから「私たちの体験談を読んでくださった方が、検診を受けよう、だれかに相談してみようと、行動につなげていただけると嬉しいです。」とお話がありました。
この座談会が、がんを正しく知っていただくことや、仕事との両立のヒントになると幸いです。